レンズ越しの君へ
一緒に行くか、と聞かれたけど日本の高校に行きたかったし、友達とも離れたくなかった私は祖父母の家で一緒に暮らすことになった。

7つ上のお兄ちゃんである風見遙はすでに結婚していて奥さんの真子ちゃんと住んでいたから。

近くに住んでいるから、しょっちゅう会いに行ってるけど。

とくに、待望の第一子、里彩ちゃんが生まれてからというもの、毎日のように会いに行ってる。

けどこうして二人そろっておばあちゃんちに来てくれることは珍しい。

「菜穂、おかえり。」

里彩を抱いた真子ちゃんがにっこり笑った。

「今日はどうしたの?」

私も席につくとおばあちゃんがお茶を入れてくれる。

「菜穂に頼みがあるんだ。」

私に、頼み?

「実は俺の取引先の息子さんが今年中学三年生で、受験生らしいんだけど、なかなか成績が芳しくないから家庭教師になってくれる人を探しているらしい。」

家庭教師?

まさかそれって…
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