レンズ越しの君へ
だけど、わたしには引き止める勇気もない。

素直になる勇気もない。

なんだかとても悲しい。

「風見!ちょうどよかった…なんかミスコンの方で…ってあれ?」

瀬戸口君。

「泣いてるの?」

泣いてる?

私が?

慌てて目の当たりをゴシゴシこする。

けどその拍子にメガネが床に落ちて、なんと壊れてしまった。

「大丈夫?」

「へ、平気。なんでもないから!」

そうは言ったものの、メガネがないとなにも本当に見えない。

この後も文化祭があるのに、どうしよう。

あ、そうだ。

そういえばいつもカバンの中に予備のメガネを入れてるんだった。

そのことを瀬戸口君に話すと

「とりあえず俺の腕、捕まって。」

仕方ないよね、ここは甘えさせてもらおう。

「そこ、階段あるから気をつけて。」

瀬戸口君はゆっくりゆっくり私の歩幅に合わせて歩いてくれる。

「あの、さ。こんな時に言うのもなんだけどこの前、俺が言ったこと…」






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