レンズ越しの君へ
私の存在に気づいていないよう。

「りょ…」

「リョータ!遅かったじゃん!あたし、ずっと待ってたんだよ?」

校門の陰から飛び出してきて、涼太君の腕に腕を絡めるあの子は、前に涼太君の部屋から出てきた子。

短いスカートから伸びる脚は私の規定通りのスカート丈がひどく、バカみたいに見える。

「何話してたのー?」

「ん、なんか今のままだと春日台無理って。」

春日台が、無理?

そんな、涼太君なら余裕だったのに…

「へえ、まあいいじゃん!由奈と同じとこ行こうよ!」

涼太君…

「んー、どうしようかなー。」

私の体は動いていた。

どうしてか、なんて私にもわからない。

だけど本当に考える前に勝手に体が動くことなんてあるんだ。

「せ、先生…?」

「…だめ!」

私はとっさに涼太君の手を掴んで、そして、走り出していた。

でも、きっと、涼太君が止まればそんなことできないはずなのに、涼太君は走ってくれた。
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