レンズ越しの君へ
「…っ、はあ…」

つ、疲れた…

こんなに全力疾走したの、いつぶり?

運動不足をひしひしと痛感する。

「先生、どうしたの?」

涼太君はあんなに走ったのに息ひとつ切らしていない。

「春日台、行かないって…どうして?」

「だって意味ないもん。俺、先生が春日台に通ってたから、行きたかったんだし。」

それは嘘。

だって前に、家庭教師になったばかりの時に話してくれたよね。

春日台でバスケをしたいって。

「てか何?今はもう俺の先生でもなんでもないし、突然来てこんなことして。先生らしくないじゃん。」

私らしい?

私は、本当は…

「私は…涼太君に、春日台を目指して欲しい。」

「なんで?意味ないって言ってんじゃん。」

だって、それは…

「私、あの…」

ほら、ちゃんと言うの。

殻を破って。

レンズを外して。

レンズ越しに見えてた世界に飛び込め!!
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