レンズ越しの君へ
全身を巡る。

私は頷いた。

「やった!ありがと。」

キラキラと笑う君。

思い切って飛び込んだ世界はずっとずっと、レンズ越しに見てた時よりも輝いて見えた。



「つうかさ、もう先生って呼ぶのやめるね、彼女だから、菜穂って呼ぶから。」

帰り道、涼太君が言う。

いきなり呼び捨て…

いや、でも前に何回かされたことはあったけど。

「あと、やっぱ家庭教師やってもらいたい。俺、高校は春日台行くけどそのあとの大学も菜穂と同じとこ行くから。だってそしたら一年だけかぶるでしょ?」

「でも、ちゃんと涼太君のやりたい分野に進まないと…」

進路はそんな理由で決めちゃダメだ。

「俺のしたいこと?そんなの、一つだよ。」

すると涼太君の顔が近づいた。

「今すぐにでもできること。菜穂とキスしたい。」

「っ…」



レンズ越しに見えた彼は私をまたさらに違う世界に連れて行く。

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