レンズ越しの君へ
先生がもう一度、今度は俺の手をとった。

「ここ、擦りむいてる。」

先生の白くて細い指が俺の手の甲をなぞる。

もう、いいや。

「菜穂…」

たまらず抱きつくと身をよじる。

「りょ、うた…くん!」

菜穂、なほ、ナホ…

本当はそう呼びたい。

だって俺は彼氏でしょ?

「菜穂、好き。」

「う、…ん。」

「菜穂は?」

レンズの奥の綺麗な瞳。

うるんで、揺れて。

「…すき…」





✼end✼
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