レンズ越しの君へ
ある春の日
ドキドキ…

心臓の鼓動が速まる。

私は小さく手をぎゅっと組んだ。

お願い、神様。

なんて心の中で祈りつつ、そういえば自分のときは神様に祈ったりしなかったな、なんて考える。

3月も半ば、今日は公立高校の一般入試の合格発表。

発表は朝の10時から。

今は九時半で、私は朝六時半から起きてソワソワしてる。

「菜穂ちゃん、お茶淹れたから飲みましょ。ほら、座って。」

涼太君のお母さん、志歩さんはのんびりと言う。

「菜穂ちゃん、恵海ね、クッキー焼いたの!食べて!」

私は笑顔を作ると席に座った。

確かに涼太君はボーダーラインも自己採点だと超えていたし、合格確実なんだけど。

だけどそれでもやっぱり、ドキドキしてしまうの。

「菜穂ちゃん、ありがとうね。あの子があんなに勉強頑張ってくれたの、菜穂ちゃんが家庭教師になってくれたおかげよ。」

「そんな!私もいい経験をさせていただいて…」

涼太君、すごく頑張ったもんね。

一年前とは見違えるほど。
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