レンズ越しの君へ
そのご褒美、とは。

受験まであと二日、最後の家庭教師の日。

私は自分の受験が終わり最後追い込みの二週間だけ涼太君の家庭教師に復活した。

模試でもA判定、合格ラインも余裕で超えていて内申書も一学期から比べるとかなり上がった涼太君なら合格間違いなし。

いつものように勉強後に志歩さんが持ってきてくれたココアとクッキーを食べていると涼太君が言った。

「ね、先生。合格したらご褒美ちょうだい。」

「ご褒美?」

そういえば家庭教師を始めたばかりの最初のテストの時にも同じようなこと言ってたっけ。

あの時は確か、三教科で90点以上とったらデートするとかいうめちゃくちゃな要求。

「えーっと、何か欲しいものでもあるの?」

「うん!俺、菜穂からキスしてほしい。」

思わず持ってたココアを落としそうになった。

「な、な、何言って…」

「だってさー、せっかく付き合い始めたのに勉強ばっかで全然カップルっぽいことしてないじゃん。」

だからって…
< 79 / 83 >

この作品をシェア

pagetop