レンズ越しの君へ
その一週間後の土曜日、私はある家の前に立っていた。

表札には浅丘、と書いてある。

詳しい生徒さんの事情で知っていることは

中学三年生の受験生

苦手科目は数学

志望校は私の通う春日台高校

そのたった3つのことだけ。

引き受けたはいいけど、なんだか不安になってきたよ。

おそるおそるチャイムを押す。

どんな子なんだろう…

仲良くできるといいけどな…

ガチャリ

扉が開いて、顔をのぞかせたのは小さな女の子だった。

まだ幼稚園くらいかな?

2つに結んだ髪が可愛い。

「おねえちゃん、だあれ?」

えっと…

「私は…」

「こら、恵海。勝手に出ちゃダメだって…」

その女の子の後ろから顔をのぞかせたのは綺麗な女の人。

ほんわかした雰囲気がとても可愛らしくて、若々しい。

若くはあるけどバリバリのキャリアウーマンタイプのうちのお母さんとは全く逆。

って、今はそんなことどうでもよくて!
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