レンズ越しの君へ
「今日はお祝いだからね!涼太の好きなものたくさん作るから、菜穂ちゃんも食べていってね!」

「恵海もお手伝いする!」

「俺も何か手伝うよ。」

じゃあ私も何か手伝った方が…

「あっ、生クリーム買うの忘れちゃった…」

志歩さんが言う。

「私買ってきます!」

台所にたくさん人がいたら邪魔になるだろうし、私はそもそもそんなに料理ができるわけじゃない。

お使いならできる。

「いいの?菜穂ちゃんのお祝いでもあるのよ。」

「行かせてください!」

「なら俺も行く!ね、先生。」

り、涼太君…

そんなニコニコ顔で…

なんだかすごく嫌な予感がするんだけど…


「はい、どーぞ。」

外に出て数歩、涼太君は立ち止まって目を閉じた。

「な、なに?」

「なにじゃない、キス。」

やっぱり…!!

「無理だよ…こ、こんなところで…」

「なんで?人いないじゃん。」

それはそうだけど…

でもまだ空は明るいし、人だって通るかもしれない。

それに自分からキスだなんて…

「…もういいや。そんなに嫌ならしなくていい。」
< 81 / 83 >

この作品をシェア

pagetop