幼なじみは狐の子。2
1追試テスト
朝。
ベッドの中で、新田恋はまどろみながら、夢を見ていた。
夢の中に幼なじみが出て来た。
夢の中で、幼なじみは恋を抱きしめて、何があってもお前と離れない、と言った。
その甘い言葉が現実なのか夢なのか、恋には分からなかったので、恋はただふにゃふにゃ言いながら、照れて笑った。
と、恋の耳に、苛立った声が聞こえた。
「入学早々これね。まったく。馬鹿なんだから。」
恋が薄目を開けると、黒い目、黒いサラサラの髪。
自分を見下ろす幼なじみ、上野宗介の整ったしかめっ面が目に飛び込んできた。
「こら恋。」
宗介が口を開いた。
「遅刻だよ。いつまで寝てるつもり?」
恋は、寝ぼけ眼で枕元の時計を見やった。
ぼんやりと文字盤を見ると、時刻はもう7時半。
「わっ。」
慌てて起き上がった恋に、壁に寄りかかって腕を組んでいた宗介は、怒り笑いで洋服掛けから真新しい制服を取った。
「3分以内。顔洗って着替えて朝食。はやく。」
制服を受け取った恋は慌てて洗面所へ向かった。