幼なじみは狐の子。2
授業が終わった放課後。
「恋。」
恋が帰り支度をしていると、鞄を背負った理央が、机の前にやってきた。
「理央」
「体育祭の練習これから始まるね。あーあ、運動、面倒くさいなあ。」
理央は手に持った白いはちまきをひらひらさせた。
斜め前の席から、䄭風が振り返った。
「体育祭とか文化祭って、青春って感じがする。本物は高校のだけど。新田さん、はちまきなくさないようにね。」
「樋山くん」
「樋山くんは運動神経凄く良いでしょう。私も良い方だけど、走らなきゃならないのは憂鬱。ねえ恋、恋一緒に徒競走走るフリして歩かない?」
「歩くのは……」
「恋!。」
後ろから鞄を背負ってやってきた宗介が、恋に呼びかけた。
「はちまき絶対なくすなよ。賭けてもいい位お前は物をなくすんだから。学校の備品、なくしたら怒られるに決まってるだろ。分かったら今日中にしまう場所を決めること。」
「上野くん。」
理央が言った。
「上野くんも運動神経超良いけど、何かスポーツでも習ってたの?。上野くんも徒競走歩こうよ。」
「別に僕はなんにも。塾以外行ってなかったよ。駒井は面倒くさがんなよ。歩くなんて。」
「遊んでただけでそんな足早くなるかなあ。」
恋が首を傾げた。
「体質だろ。恋。話はそこじゃない。はちまきの事、言ったからね。分かったの?。」
「今年の体育祭、うちのクラスは白だって。紫とかの方がかっこよかったな。」
理央が言った。
䄭風が言った。
「なんでも良いよ。駒井の言うように、行事ってちょっと面倒くさいよね。新田さん、体育祭に向けて、何か目標ある?」
「うーん、特には。」
「恋はあんまり行事にかまけない方がいいぞ。夢中になると他が疎かになる。恋、お前にはやらなきゃいけないことが沢山あるんだから。」
理央が言った。
「そういや上野くんも樋山くんも足めちゃめちゃ速いけど、2人ってどっちの方が早いんだっけ?」
「さあ。知らない。」
宗介が答えて、続けて䄭風が宗介を見て面倒そうに首を傾げた。
小等部で五指に入るくらい足が早いのは宗介だったが、䄭風は前の学校の中で一番足が早かった。
2人は足の速さを競争した事がなかった。
「体育祭って、運動神経良い男子映えるよね。絶対かっこよく見えるもん」
理央が言った。
「恋は走ることよりは、転ばないように気をつけた方が良いよ。恋よく転ぶから。」
鞄を降ろしてはちまきをしまいながら理央は話を変えた。
「そうそう、誘おうと思ってた。恋、今日帰り一緒にメイク用品見ようよ。」
4人は教室を出ると、がやがやと話しながら昇降口へ向かった。