幼なじみは狐の子。2
帰り道にあるドラッグストア。
棚に並んでいるのは化粧品で、金色のケースに入った白い白粉や、黒いアイシャドウ、オレンジのチークなど。
制服姿の恋と理央は立ち止まって、品物を一つ一つ指につけて試しながら話をした。
「恋は上野くんと付き合ってるけど、樋山くんの事はなんとも思ってないの?」
青色のマニキュアを見ながら、理央が聞いた。
「うーん、思ってないっていうか……」
恋は言い淀んで、口をつぐんだ。
恋は䄭風の事を全然好きだったが、宗介と付き合い出してしまったので、行き掛かり上流れのままに居た。
䄭風のアピールは続いていたが、恋はどっちつかずで、はっきりした意思表示をしないまま居た。
「私は別に良いけど、そういうのって、いつか歪みが来るよ。」
今度は緑色のマニキュアを取りながら、理央が言った。
理央はメイクに興味があって、色々なメイク小物を沢山家に持っていた。
「友達だから言うけど、恋自身のために、早く絞った方がい良いと思うんだよね。三角関係。絶対。」
それから言った。
「そういえば上野くん、恋が隠れて樋山くんに靡くようなら言ってくれって私に言ったよ。」
「宗介が?」
「うん、なんかちょっと怖い顔して。心配なんだって。」
「……。」
「恋、愛されてるんだから、信頼を裏切っちゃ駄目だよ。」
理央はそう言ってから、緑のマニキュアを戻し、赤い色のお試しのマニキュアの蓋を取って爪に塗った。
恋が見ている前で理央の丸い爪が、ラメ入りの鮮やかな赤色に染まっていく。
「高校生になったら、メイクの学校行くんだ。」
マニキュアを塗った爪をかざして見ながら、理央が言った。
「その時までに練習を積んでおくの。ねえ、上野くんも樋山くんも、高校生になったらどんな風になるかな。」
「さあ。」
「きっとかっこいいよ。」
恋は首を傾げて、理央がマニキュアを棚に戻すのを見ていた。