幼なじみは狐の子。2
体育祭の練習は賑やかに始まった。
ジャージ姿の1年生は、今日は体育祭の合同練習をしていた。
ピピっと笛が鳴って、生徒達が走り出す。
「次は徒競走の演習です。順番は決められた通り、整列してください。今日は50メートルをついでに計測します。」
恋は、生徒達と一緒に、はちまきを巻いて順番通りに並んだ。
ピピっと笛が鳴って、白線の上を宗介が走り出す。
足の速い男子の典型的なフォームで、スパートをかけた宗介は組の1位でゴールした。
次は䄭風の番だった。
恋が見ていると、なるほど䄭風は走るのが得意と言っていただけあって速く、亜麻色の癖っ毛が靡くのはほんのちょっとの間だけだった。
恋の番になると恋は一生懸命50メートルを走り、走り終えたところで立ち止まって息を整えた。
「集合。」
号令がかかり生徒達が整列して座る。
体育の先生は計測表を見ながら口を開いた。
「さっきは言わなかったんですが、計測ついでに白チームの選抜代表を今日決めました。上から順番です。」
先生はまずリレーの代表の名字を読み上げた。
「男子、松下、城田、樋山、上野、山内、浅井、森永。女子、井口、上原、山井、清竹、林、内田、中川。アンカーを決めるように。」
「選ばれたね」
恋が隣に居た宗介に囁くと、宗介は澄まし顔で
「面倒」
と一言言った。
「選ぶの今日なら、ちゃんと走らなかったのに。ああ、だる。」
「そんな」
「それから代表の二人三脚のペアです。」
恋が言う前に先生は続けた。
「上位六名。男子、松下、城田ペア。樋山、上野ペア。山内、浅井ペア。」
宗介と䄭風がぎょっとして顔を上げた。
「はああ?」
「先生、ちょっと、待ってください。」
䄭風が手を挙げた。
「ペアは変更できますよね?。1チーム目と僕替えてください。」
「速い順です。」
先生は言った。
「変更すると足並みが揃わなくなる。変更は不可です。」
「今日の順位でしょう?。先生、今日僕本気で走ってません。」
䄭風が粘ったが、先生は是と言わなかった。
「はああ?。僕にあいつと走れって?」
䄭風がショックを受けた顔で言った。
「肩組みたくない。仲間ヅラされたくない。おぞましい。」
「こっちの台詞だよ。」
宗介が毒づいた。
「恋を挟んで色々あんだよ。ああ、面倒。決まり。樋山は体育祭来んなよね。」
「はあ?。そっちが。お前の方が来なければいい話だろ。」
「静かに。」
先生の言葉で宗介と䄭風が静かになる。
「決定事項です。代表者以外も、気を抜かないように。本気で走るように。怠けたら校庭一周。」
恋は面白いような困った様な気持ちで居た。
「以上。」
この体育祭どうなることやら。