幼なじみは子狐の恋。2
学校から帰った恋は、宗介の家に来ていた。
連日の体育祭の練習で、恋はちょっと疲れていた。
宗介がお盆にお茶とお菓子を乗せてキッチンから出てくる。
「今日も体育祭の練習、昨日も体育祭の練習。これじゃあ他の事をする時間がなくなっちゃうね」
恋はソファに寄りかかって言った。
「みんな燃えてるもんね、白組勝とうって。」
「僕はそんな事ない。どこが勝ったって構わないし、必要以上にやる気はない。面倒くさ。」
宗介はお茶を一口飲むと口を開いた。
「新聞部の先輩。あれ、どうにかなんない?。特ダネ特ダネって、今日も教室来てた。」
「イケメンペアっていうのが、余っ程珍しいんだろうね。」
「恋はあいつらに構うなよ。聞かれても答えないこと。あの先輩たちがネタにしてるの、僕達に対して失礼だからな。」
「うん、分かってるよ。」
恋の答えを聞きながら、宗介はふと、恋の半ズボンの膝に擦り傷があるのに目を留めた。
「あ、こら。」
宗介が言った。
「まーた怪我して。」
宗介は立ち上がってダイニングの棚から救急箱を出して来ると、蓋を開けて消毒液を出した。
「しみるから嫌だよ。」
「平気。」
宗介は自分の事のようにそう応えると、コットンに消毒液を含ませて傷口を拭いた。
「まったく。擦り傷なんて作ってこないの。」
傷口に絆創膏を貼りながら、宗介が言った。
「お前はいつも不注意なんだから。心配するだろ。気をつけないのが悪いの。……ああ嫌だ嫌だ、ほんとに。体育祭、早く終わんないかな。」
ぽんぽん、と仕上げに叩かれた絆創膏の傷を見ながら、そうだね、と恋はなんとなく返事をした。