幼なじみは狐の子。2
恋は昇降口を抜けて教室へ入った。
恋が見ていると、先に教室に帰っていた理央は、自分の席でイラストの印刷されたプリントの様な物を見ていた。
「理央」
「うわっ」
後ろからそっと近づいていって声をかけると、理央は驚いて声をあげた。
「なんだ、恋か。びっくりした」
「新聞部の先輩達もう帰ったよ。何見てるの?」
恋が聞くと、理央は机の上の沢山のカラフルな部活動のビラを指差した。
「壁新聞の下にあったんだ。中学校生活、暇だし何かしようかなと思って。どうせだから部活入ろうと思ってるんだ。」
「へえ。」
恋は、理央に釣られて、机の上の『来たれ!卓球部。君の入部を待っている』という写真付きのビラと、『華道部で美しい花を愛でよう』というイラスト付きのビラを見た。
「一つ一つ見てみると沢山種類があるよ。どの部活も結構忙しいみたい。放課後使うんなら好きな事したいから、今慎重によってるところなんだ。」
「ふーん」
数人の生徒が廊下をすれ違っていく。
恋は、華道部の下の、『吹奏楽部で音楽に触れよう』や、『スポーツしよう!テニス部』のビラを見ながら、部活動のことを考えた。
理央がビラを撫でながら言った。
「サッカー部はいつも盛況。バスケ部とサッカー部はかっこいい男子が多いイメージがない?」
「分かる。」
「運動部のマネージャーをやってみたい気もするけど、中学ではないし、大変そうだから、それは諦めたんだ。」
「そうなんだ。」
恋が頷くと、理央は机の上の沢山のビラを重ねて並べ直した。
「樋山くんは写真部に入るのかな。上野くんはサッカー部ってイメージだけど、小等部のサッカークラブには入ってなかったよね?」
「多分」
「明日香は中学でも陸上部に入るって。私は手芸部に入ろうかと思ってるんだ。恋、恋も私と一緒に手芸部に入らない?」
「部活に?」
「中学校生活の思い出。恋も何かやった方が絶対良いよ。」
理央は重なったビラの角を撫でながら笑った。