幼なじみは狐の子。2
濃いベージュのスカートに白いシャツ。
胸元には真っ赤なリボン。ジャケットはダブルで、スカートと同じ色だ。
恋は、さっきなんで宗介を見てあれ?と思ったのか分かった。
夢を見ていたからではなく、宗介が見慣れない新しいブレザーを着ていたから、恋にはそれが引っ掛かったのだ。
今日は中等部の入学式。
恋たち新入生は、8時には講堂に着くことになっていた。
「いきなりこれじゃあ、先が思いやられる。馬鹿なんだから。昨日あれだけ早く起きろって言ったのに。」
早足で通学路を歩きながら宗介が言った。
「中等部の建物は一回り向こうで、時間がかかるんだから。ちゃんと準備しなきゃ駄目だろ。」
「ごめん」
「寝坊しないって昨日僕と約束したのに。お前のせいで遅刻する。次遅かったら学校に一緒に行くのを辞めるからな。」
「……」
恋と宗介は、小等部の終わり以来付き合っている。
2人は前から付かず離れずだったが、恋人に昇格と言うことで、その距離感は正式に維持される事になった。
恋は、もっとラブラブで居たい、と思うわけではなかったが、遅刻くらいで、こうも自分を邪険に扱うのはいかがなものか、と思っていた。
それを宗介に言いたいのだが、うまく言葉が見つからない。
「大体、お前はいい加減なの。いつもいつも。目覚まし時計をかけるのを忘れなければ良いだけの話だろ。僕がそれについても昨日あれだけ言ったのに。ほんとに。呆れるったらない。」
宗介はガミガミと続ける。
「中等部はもう小学生とは違うんだから、自覚しろよ。もう親たちも何も口出せない齢なんだぞ。大人に近いの。考えろよ。」
恋が、お説教を聞きながら歩いていくと、向こうの方に、中等部の建物が見えてきた。
恋は宗介に叱られながら道を講堂へ向かった。