幼なじみは子狐の恋。2
学校から帰って、宗介の家に行った恋は、リビングのテーブルの上に、理央が取ってくれた部活動のビラを取り出した。
今日貰って来ていないビラは、入る部活が今日決まらなければ、また加えて貰って来るつもりだった。
「部活か。恋、何かやりたいものでもあるの?」
ダイニングからお盆にアイスカフェオレのコップを2つ乗せて持ってきた宗介は、ビラを前にソファに座った。
「うーん、そういう訳でもないんだけど。」
「部活は時間を使うよ。上下関係もあるし、結構大変だよ。顧問の先生との相性もあるし。」
宗介は剣道部のビラを手に取って眺めながら、アイスカフェオレを一口飲む。
「みんなが宗介はサッカー部に入ってそうって言うけど、入らないの?」
「いや。僕は忙しいから。勉強あるし時間取られたくないし。だから中等部でも部活には入らないよ。」
「ふーん。」
恋は持って帰ったビラを物珍し気に見た。
『剣道部で高みを目指そう』の後ろに、『写真部、校内新聞を盛り上げます』のビラ。
恋の通っている中等部は部活動の種類が多く、今日持って帰っている以外にも沢山部活があるはずだった。
恋は、ふと、『茶道部。一緒にお菓子を食べませんか?』という小さなビラに目を留めた。
茶道部のビラには、恋の好きないつも食べるお菓子や、和菓子の写真と一緒に、抹茶の写真が印刷されていた。
「お菓子の持ち込み歓迎……ゆったり和室……学年ごとの指導です。」
「学年ごと?。珍しいね。」
恋が読み上げると、宗介がビラを覗き込んだ。
「着物貸し出し……放課後おやつタイム。変わった部活だな。」
「宗介、茶道ってやった事ある?」
「そういや大昔に親に連れて行かれた教室で、一時抹茶飲まされてた。行儀とか精神修養に良いんだって。あんまり覚えてないけど。」
「みんなでお喋りおやつタイムだって。良いなあこの部活。」
「入るの?」
宗介は恋を胡散臭気に見た。
「一回入ったら辞められないんだぞ。始めたら義務も責任も出てくるんだから。そういうの全部分かってるの?。」
「分かってるよ」
「学年ごとに分かれてるのはいいけど、なんか嘘くさくないか?。おやつを食べるだけの部活なんてあるのかな。本当は何をする部活なんだろう。」
「疑いすぎだよ、宗介」
「ふーん、じゃあ入るのね、そう。」
宗介はアイスカフェオレを一口飲んでから言った。あっさりと。
「僕も入ろ。」
「えっ宗介部活やるの?」
恋が驚いて聞き返した。
「お前が入るなら僕も入る。恋人同士。思い出になって良いから。」
「そうなの?。やったあ、理央は手芸部だし明日香は陸上部だから、1人で行かなきゃいけないかと思ってたんだ。」
「まったく。始めたら辞めない事。まずはお試しの入部だけど。恋、先生に丁寧に居ろよ。」
恋と宗介は、それからまた部活の話を少しした。