幼なじみは狐の子。2
そして待ちに待った仮入部初日。
宗介は一階にある男子更衣室で濃紺の着物と袴を着て、部活動をする茶室へ向かった。
戸を開けて入って行くと茶室となる和室には、䄭風が一人で座っていた。
ベージュの着物に袴を履いた䄭風は宗介が来ると舌打ちした。
「何だよ」
「別に。」
「うざ。」
宗介は毒づいて、䄭風の居ない方の畳に座った。
「上野」
䄭風が呼んだ。
「何」
「新田さんと別れろよ。お前たち釣り合わないんだよ。待ってんだよね、こっちは。いい加減。」
「嫌だね。」
宗介が言った。
「一生恋を大事にして結婚するんだ。僕たちは。樋山の出る幕はない。お前はただの邪魔者なんだよ。」
䄭風はしかしシカトして聞いた。
「早く別れろ。お前たちいつなら別れる?。新田さんを諦めたら誰か紹介してやるのに。」
「別れねーよ。しつこい。紹介要らねーんだよ。」
「僕の新田さんに近づかれて、本当に鬱陶しい。邪魔。部活だって来なきゃ良いのに。」
「こっちのセリフ。お前がくっついて来たんだろ。」
「僕は新田さんが好きなんだ。」
きっぱりとそう言った䄭風に、宗介は不機嫌な顔で黙った。
2人だけの空間には、殺伐とした空気の他に、仲の悪い2人が2人きりで居ることによるちょっと不思議な気配がしている。
䄭風が呟いた。
「新田さんは何でこんな奴が良いんだろう。確かに顔が良いのは認めるけど、それだけじゃんか。」
宗介はイラッと来た。
同じ事を思っていたのだ。