幼なじみは狐の子。2




 講堂の入口には式典用の艶やかな花が飾られていた。

 2年生や3年生の作った千代紙の大きな壁飾りもあって、入口は華やかだった。

 講堂の中には制服姿の知らない顔が沢山居て、それは中等部から恋の学校に新しく入ってくる生徒達だった。


「居た居た、恋。」


 新しい制服を着た駒井理央(こまいりお)がやってきて手を振った。



「恋と上野くん、中々来ないから心配したよ。どうかしたの?。今日は。」

「恋が寝坊したんだ。ったく。さっき説教したばっか。いい加減成長しないんだから。僕が言った事、分かったの?。恋。」

「新田さん」



 理央の後ろから、金髪に近い色の癖っ毛の男の子が現れた。

 人目をひく美しい容姿の樋山䄭風(ひやまみかぜ)は、宗介を無視して恋に話しかけた。



「遅いから心配した。何してたのかと思ったよ。もしかしたら特別な用事でもあったのかと思って。」

「樋山くん、早く着いてたの?」

「うん。新田さんたちよりはずっと早くにね。でも大丈夫、まだ始まらないから。寝坊したなんてお茶目さん。」 

「樋山、恋に話しかけないでくれない?。目障り。それからその言い方、気色悪いんだよ。」

「別に。上野には言ってない。僕は新田さんに言ってるんだ。お茶目さんはお茶目さんだろ。入学式まで新田さんと来るなんて嫌味な奴だな。」



 式典用の教卓が置かれた講堂の舞台から恋が目を戻すと理央が頷いた。



「もうすぐ始まるね。あ、そういや恋、今年も私と同じクラスだよ。」

「え、クラス分け、もう発表されてるの?」



 恋が驚いて聞き返した。



「うん。入口でクラス分け表配ってたでしょう。貰わなかったの?。私と恋と明日香と、上野くんと樋山くんと多紀。今年もみんな一緒。やったね。」

「新田さん、また一緒だよ。よろしくね。」



 䄭風がにっこり笑った。



「上野まで一緒なのがかなり腹立つけど。どうしてこいつまで同じクラスなんだろう。」

「うわ……面倒くさ。樋山も同じクラスかよ。恋、樋山には近づくなよ。」



 宗介は続けた。


「言っとくけど、浮気したらただじゃ置かないから。」

 
 しかし䄭風はそれを無視した。



「新田さん、今年こそは。上野とさっさと別れてよね。順番。僕待ってるんだから。」

「は?」

「大体、僕に言わせれば、新田さんと上野じゃ釣り合わないんだよ。付き合い出したのおかしいよ。僕は絶対認めない。」

「……戯言。女子に聞いてみな。恋には前から僕しかありえないって言うから。分かりきった事。悪いけど、僕は樋山なんかに認められなくても構わない。」

「腹立つな。新田さん。」

「や、辞めようよ二人共……」



 困り顔の恋が止めると、理央が言った。


「そうだよ、喧嘩は良くないよ。ねえ、グループ作りもこのメンバーでやろう。もちろん、新しい仲間も一緒に。ああ、中等部ってわくわくするね。」


 やがて号令がかかって、入学式が始まった。







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