幼なじみは狐の子。2
人が多いのでエスカレーターでなく階段で行こう、と恋と宗介は端にある広い階段に向かった。
階段を登りだした時、恋は、ふいに足首に痛みが走ったのに気づいた。
「あ」
宗介が恋の様子に気付いて目を留めた。
恋のサンダルの足には擦れた様な傷が出来ていた。
「まーた怪我して。」
宗介が言った。
恋は踊り場のベンチに座った。
宗介は鞄からチャックのついた小さい袋を取り出すと、中を開けて、絆創膏を出した。
宗介は恋の足元にしゃがむと、恋の足に器用に絆創膏を貼った。
「これから先私達百回くらいデートするね。」
足を伸ばして絆創膏を眺めながら恋が呟いた。
「何それ。」
「2人はずっと一緒だね。楽しみだなって思って。」
宗介が言った。
「デートはもっとするよ。数え切れないくらい。期待してなよ。……痛い時は素直に言う。気遣われるのの何が嫌なのか分かんない。これからは。分かった?」
踊り場からだと、ショッピングモールの喧騒は、ちょっと遠く感じられた。
恋はつま先で、宗介の手をなんとなくほんの少しつついた。