幼なじみは狐の子。2
恋は、キャラメルについて怒った事を、明日香に謝ろうと思っていた。
陸上部の明日香は、放課後は外に居た。
恋が探すと、明日香は部活前のウォーミングアップのために、校庭を走っている所だった。
恋は、走ってくる明日香を迎えるため、中庭から校庭に向かった。
グラウンドで、ジャージ姿の明日香は、恋の姿を見つけると、屈託なく手を振った。
「恋!」
「明日香。」
恋は明日香に向かって手を振り返してから走り出した。
と、そこで、恋は大失敗をやらかした。
転がっていた小さな石ころに躓いて、恋はその場で盛大にすっ転んだのだ。
転んだ拍子に、驚いた恋は、うっかり狐に変身してしまった。
もくもくと上がる白い煙。
「え、恋!?」
明日香は走ってこちらにやってきた。
ギリギリのところで、狐から人の姿に変身し直した恋は、焦ってモゴモゴと意味の通らないことを言った。
「今狐が居た?」
明日香が目まん丸にして聞いた。
「今狐が見えたよ。恋の代わりに。」
「嘘だよ、そんなはずないよ。」
恋は冷や汗をかきながら言った。
「えええ、今何か起きた。何か狐みたいのが見えた。」
「き、気のせいだよ。」
「おかしいなあ」
理央は目をパチクリしながら、で、どうかしたの?と聞いた。
思い出した恋は、
「押し付けだから、キャラメルが一番って言った事謝りたくて。」
と言った。
「なんだ、そのこと。」
明日香はまだ変身の煙の跡を探しながら言った。
「気にしてないよ。こっちこそごめんね。」
そして言った。
「確かにキャラメルもおいしいしチョコレートよか甘い。恋キャラメル好きなんだね。」
笑いながら、次に明日香が言ったのは、ずばり核心をつく言葉だった。
「っていうか、恋、実は狐だったりして?」
恋は、目を白黒させながら、どうにか明日香ごまかして、這々の体で逃げ帰った。