幼なじみは狐の子。2
教室。朝のホームルーム前。
恋が自分の席で荷物を整理していると、理央がやってきて声をかけた。
「恋、おはよう」
「あ、理央。おはよう」
「新しい教室もう慣れた?。教室綺麗だよね、小等部のより。なんか全部が新しい感じがしない?」
「分かる。2階なんだね、1年の教室って。ベランダがある。」
「新田さん」
斜め前の席から䄭風が呼んで、恋を振り返った。
「一学期のこの席順、バッチリだね。やっぱり僕と新田さんは強い縁で結ばれてる。」
「調子乗んなよ」
後ろの方の席から、宗介が忌々しげに声を掛けた。
恋の席は窓側の前の方だったが、宗介の席は廊下側の一番後ろだった。
宗介は席を立って荷物を置くと、理央の居る恋の机の近くにやって来た。
「恋、樋山と口聞くなよ。授業中いちゃついたら後でげんこ。後ろから見てるからな。」
「うざったいな。僕と新田さんの勝手だろ。授業中は喋れないから、お前たちの席が離れて嬉しい。そうこなくちゃ。」
「鬱陶しいんだよお前。恋は僕の彼女なんだから、いい加減諦めろよ。新学期なんだし、いい加減他の女子を探せよ。誰か居るだろ。誰だって良い。」
「嫌だ。新田さんじゃなきゃ。僕は一生を新田さんに捧げるんだ。上野はそのつもりで居ろよ。」
「忌々しい……本当に鬱陶しい。」
「知らない。新田さんさえ手に入れば。後はどうとでも好きに考えてくれていいよ。ね、新田さん」
䄭風が自分に微笑み、宗介が自分を睨んだので、恋は困り果てた顔で理央を見た。
理央はこの3人のこれには慣れっこで、少しも慌てた素振りを見せなかった。
「そういやさ、この学校、一学期の最初に追試のあるテストするんだって。昨日ママから聞いた。恋知ってた?」
ショートヘアのヘアピンをいじりながら、理央が聞いた。
「ええっ」
恋が声をあげると宗介が頷いた。
「知ってる。なんか学力測る大きいテストで、合格点に満たないともう一回やり直しなんだって。恋、お前には前にあるって教えたろ。」
「覚えてなかった……」
「言ったよ。勉強しとけって。人の話をちゃんと聞いてないから悪いんだよ。」
「上野くんと樋山くんはいつも成績トップだから関係ないじゃない。あーあ、私どうしようかなあ」
理央が言った。
「理央より私だよ。だって理央、7割くらいはいつも取るでしょう?」
「恋、いつも点数どれくらい?」
「……くらい」
恋が言うと、䄭風がくすくす笑い、宗介がはあ、とため息をついた。
「追試ねえ。僕には関係なさそうだけど。どんなテストなんだろ。いつ頃あるんだろうね。」
頬杖をついた䄭風が言った。
「なんか抜き打ちであるらしいよ。日程言わないんだって。」
「どうしよう……」
「だーからちゃんと勉強しときなって言ったのに。普段からやらないからそうなるんだよ。」
「もし、新田さんが追試受けるなら僕も受けようかな。わざと落として。記念に。」
「樋山、恋に付きまとわないでくれない?。目障りなんだよ。そういうの。」
チャイムが鳴ったので、宗介と理央は自分の席へ戻っていった。