幼なじみは狐の子。2
6ゲーセン
「昨日ゲーセンで欲しいストラップを取りそこねた」
教室。
朝のホームルーム前。
生徒達はまだ席につかずざわざわしている。
恋を見るなり、理央は開口一番そう切り出した。
恋の机に浅く腰掛けながら。
ため息をついて。
「ストラップって?」
「◯◯戦隊の公式ストラップ。後少しだったのに。ねえ、恋、どう思う?」
理央は鞄を片手に恋を見下ろして、アンニュイな表情をした。
「ゲーセンって楽しいから、ついついお小遣い使っちゃうんだよね。置いてあるもの全部欲しいもん。」
「ゲーセンなんて、あんまり行かないけど。」
「え、そうなの?。私はしょっちゅう行くよ。ストレス解消に良い。あの楽しげな音楽も。カラフルなアーケードゲームも。」
「へえ……」
「恋。」
後ろからロッカーに鞄をしまっていた宗介がやってきて恋に声をかけた。
「お前はそんな所行かなくていいの。うるさいだけ、あんなところ。駒井、そうやって恋に悪い遊びを教えないでくれない?」
「酷い言い方するなあ。ゲーセンにはゲーセンの良さがあるよ。上野くんが嫌いなだけでしょう?。」
「あんなの金使うばっかりで、なんのためにもならないし、そもそもわざわざゲー厶をしに行くなんて。気が知れないよ。無益。」
「行ってみたいけど……」
「やめな、恋。」
「行きたいよね?。やっぱり行きたいよね?。さすが恋は話が分かる。」
理央は言葉を切った。
「今度の日曜、ストラップに再挑戦しに行くから、恋も一緒に行こうよ。」
「え、私も?」
恋が聞き返した。
「上野くんは嫌いだっていうなら来なくても良いけど、みんなで行った方が楽しくない?。みんなでゲーセン、洒落込もうよ。」
「だから、恋を誘うなっていうのに。恋、行かなくて良いからな。」
「私は……」
恋は、小さな声で、行ってみたい、と言った。
「決まり!。じゃあ日曜の朝から、駅前の新しいゲーセン行こ。」
「行かなくて良いって言うのに。もう、駒井は悪影響。」
「樋山くんも誘うから、上野くんもどうせ来るでしょ?。来なきゃ恋を盗られちゃうよ。」
「なんで樋山を誘うんだよ?。」
「これは恋の親友としての思いやり。」
不満げな宗介に理央がきっぱり言った。
「揺れてる間は両手に花で過ごした方が、絶対楽しいもん。」
「はああ?」
「三角関係、見てるの楽しいしね。」
苛立った顔をした宗介に理央が、どっちも応援してるよ、と笑った。