幼なじみは狐の子。2
7䄭風とデート
朝。
教室には朝のホームルームを待つ生徒達の喋り声。
今日は一段と声高に、恋とは普段関係ないグループの女の子が笑い声を立てている。
恋がドアを開けて教室に入った。
中の物は机へ。鞄はロッカーへ。
そこで、恋に気付いた理央が手をあげて、おはよう、と言った。
「恋、昨日、夜何食べた?」
鞄を置いた恋の机の所まで来ながら、理央が聞いた。
「私は夜は唐揚げ食べたよ、南蛮漬けにして。甘酸っぱくておいしかった。好物なんだ。昨日は幸せだったな。」
「昨日の夜はハンバーグだったよ。」
「ハンバーグかあ。ハンバーグも良いよね。」
恋達が話していると、ロッカーから回って恋の席に宗介が歩いてきた。
「恋!」
「宗介。」
「食べ物の事ばっか話してないで、たまには何か考えろよ。少しは勉強して。」
宗介はちょっとだけ首を傾げた。
「学校の勉強以外でも。自分のためになることあるだろ。自炊したり家のことしたり。何でも。」
「そんなの。」
斜め前の席から恋の方を振り向いた䄭風が言った。
「お手伝いさんにやってもらって、新田さんは遊べばいいよ。わざわざ考えないで、気楽に構えてればいい。」
「樋山」
「上野はがめつい。新田さんと一緒に楽しい事を考えようとしたって、僕がいる限りそうはいかない。」
理央が聞いた。
「楽しい事って、何を思いつく?」
恋が言った。
「音楽とか。」
「明るくなれて面白い事が楽しいんじゃない?」
「あんまり突き詰めると分かんなくなる。何をするのが良いのかな。」
「新田さん、僕と一緒にそういう活動しようよ。一緒に迂遠な事とか考えて楽しもうよ。」
「うざ。樋山、それは彼氏の権利。お前はひっこんでろよ。」
「迂遠な事って、恋愛で映えるよね。永遠とか、一瞬とか、掴めない物事とか。そう思わない?」
「確かに。」
恋が頷くと、ふう、とため息をついた宗介が言った。
「恋、今考えないで、僕と2人でいる時に考えろよ。」
そうはさせじと䄭風が恋の机に体重を乗せた。
「僕がいる時にしなよ、新田さん。そういう遊び恋愛であるんだ。僕とやってよ。」
「迂遠な事は考えるとふわふわした気持ちになる。楽しい事っていうよりは不思議な感覚だけど。恋はいつも取り合いだよね。」
理央が笑ったところでチャイムが鳴った。