幼なじみは狐の子。2
この間と同じ様に、恋達B班は教室の外に出て社会の調べ学習をすることにした。
今度の学習場所は図書室だった。
「そろそろ資料を集めようか。」
クラスメートの1人が言った。
「商店街についての歴史、資料あるだけ持ってきて。」
「オーケー」
「了解」
恋は地域の資料が図書準備室にあるのを知っていた。
恋が1人で図書準備室に入ると、部屋はカーテンが閉まっていて薄暗かった。
棚にある地域についての資料を恋が捲っていると、ガラガラと戸が開いて、後ろから䄭風が入って来た。
「ここ誰もいないね。」
䄭風が口を開いた。
「ちょうどよく秘密の話ができる。新田さん、何も喋ってくれないの、怒ってるからね。」
恋は困った顔で樋山くん、と呟いた。
宗介に悪い、とか、はたまた喋らないと樋山くんに悪い、とか、考えて恋はますます困った顔をした。
「上野と早く別れて欲しいんだけど。」
䄭風が口を開いた。
「なんで僕を選ばないの。この間デートして分かったでしょう。僕と君はぴったりだ。」
「……。」
「そういう顔して、被害者ヅラしてないで、何とか言ったら?。しゃんとしなよ。へたれてないで。」
「悪いけど……」
恋は樋山くんとは付き合えない、と小声で言った。
「宗介が怒るからじゃなくて、二股、する気なくて、樋山くんとは付き合えないよ。」
「どうして?。」
「どうしてっていうか……」
「それってどういう意味?。僕の事少しも好きじゃないの?。」
䄭風が聞いた。
恋は言い淀んで俯いた。
「好きだけど……」
「まだ上野よりは好きじゃないって言いたいんだ。そうでしょ?」
恋はためらいがちに頷いた。
宗介はいつでも恋の運命の幼なじみだったが、䄭風は突然現れた王子様だった。
自分に向かって微笑む王子様はきらきら輝いて魅力的で、恋には時々どちらか一方をそう簡単には選べないような気がした。
「じゃあ質問を変えよう。上野と同じくらいには、僕の事を好き?」
䄭風が聞いた。
恋は頷いた。
「本当に本当?。良い?。僕嘘つき嫌いだからね。」
恋が頷くと、䄭風はくすくす笑い出した。
「やっぱり。僕がちょっと後押しさえすれば、僕達は結ばれる運命なんだ。君は迷ってるんだね。」
恋が俯くと、䄭風は優しい声で言った。
「迷って良いよ。もちろん。」
それから䄭風は首を傾げて言った。
「新田さん、放課後、僕の家へ来ない?」
「ええっ」
「話したいんだ。色々。」
䄭風は恋をまっすぐ見つめた。
「積もる話もあるし、僕も、新田さんに文句の一つも言いたいしね。」
困った顔で断ろうとした恋に、䄭風は恋から目を逸らすと、あっさりした調子で言った。
「来てくれなかったら、また僕は泣くしかない。」
「!。」
「新田さん、僕を泣かすの好き?。」
首を傾げて覗き込むように言われて、恋は何も答えられない。
閉じたカーテンの隙間から細く光が差し込んで来た。