幼なじみは狐の子。2







 䄭風の御屋敷。
 泡の出るバスタブと美しいタイルの壁。




────泣く、ねえ。





 洗った体をシャワーで流しながら、䄭風はひとりごちた。

 泣く、と言うと、恋の反応が変わるのに、䄭風は気づいていた。

 実際は泣いたことなんてないし、単なる好意の強調で、そんなに気にされる謂れもないんだが。

 自分がさめざめ泣くタイプに見えるのかと思うとちょっと心外だったが、これを使わない手はない、と䄭風は思っていた。





 ────優しい新田さんはこれからきっと僕のもの。





 䄭風はシャワーから出ると、ふかふかのボディタオルを取って着替えを始めた。








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