幼なじみは狐の子。2
また違う日。
恋は結局、ある学校の帰りに䄭風の御屋敷に寄った。
広い門扉や車が何台も停まっているガレージ、花の咲き誇る広い庭は、今日はなんだか親しみが無いように思える。
恋が御屋敷の玄関に着くとすぐに、䄭風に広いホールから美しい居間に通された。
「新田さん、居間がいい?。客間が良い?」
䄭風が聞いた。
「今日誰もいないから、部屋全部使えるけど。客間の方が豪華だよ。」
冷蔵庫を開けながら䄭風が聞いた。
「先生に呼ばれたっていう嘘、あれ上野信じたでしょう?」
「うん、うーん」
「上出来。二人で嘘ついちゃったね?。新田さん。」
くすくす笑いながら䄭風が2つのコップにアイスコーヒーを入れた。
「前から、夕方になった後に家に呼びたかった。その方がロマンチックでしょう?」
宵になりかけた広い芝生の庭が見えるガラス張りの窓を眺めながら、䄭風が言った。
恋はソファで俯いていた。
結局、嘘をついて䄭風に会いに来てしまったのは、自分の不甲斐なさだ。
宗介にバレたら、と思うと冷や汗が出たし、䄭風について来てしまうのはやっぱり裏切りの様な気がした。
コーヒーを勧めながら䄭風が聞いた。
「後悔してる?」
「……。」
「僕を選んだら後悔させないのに。絶対。」
「樋山くん、付き合うのはちょっと……」
「付き合えないのに、僕を好きだって言う。新田さんはわがままだ。」
それから言った。
「僕は君が好きだし、何が何でも付き合ってもらうよ。今日は君を独占できる。」
「私が今日来て言いたいのは、」
恋がためらいがちに言った。
「選べないほど好きだけど、でも付き合えないって事。宗介が居るもん。」
「へえ。それで?」
「だから、やっぱり友達として付き合って貰いたいっていうか……」
「ふーん。」
䄭風はつまらなそうに相槌を打った。
䄭風の目には、きまり悪そうな恋が映っている。
膝に手を置いて、目を見ずに、小さな声で話す恋。
䄭風はそれからいきなり話を変えた。
「ねえ、花火やろうよ」