幼なじみは狐の子。2
「何も言われないと思ってた?」
和室。
恋は、壁に寄りかかった宗介を前に、正座させられていた。
「だって」
恋は、涙声で、頭を撫でながら言い訳を言った。
さっき、和室に入りしな、恋は宗介に痛いげんこを一発頂戴したのだった。
「2回目。いい加減にしな。ふらふらして見える動きをするから。僕がどういう気持ちか分かる?」
「……。」
「ったく。しょうもな。こっちが一生懸命大事にしてやっても通じない。疲れる。最低。この裏切り者。」
「だって……」
恋はボソボソ抗弁した。
「ちゃんと宗介を好きって言ったよ。」
「当たり前だろ。僕とお前は付き合ってるんだから。どうして、」
宗介は言葉を切った。
「どうして樋山なんかに靡くんだよ?」
宗介にはそれが分からなかった。
恋が自分を好きなのも知っている。
普段愛情を見せる時、恋はしごく満足げだ。
自分も愛情を見せられて嬉しい事の方が多かった。
────どうして。
宗介は言った。
「僕はお前を大事にしてる。他の女子を見た事ない。それなのにこんな目に遭うなんて納得行かない。」
宗介が続けた。
「お前のことばっかり考えて生きてる。今も。前から。この先も。蔑ろになんかした事ないしするつもりもない。愛してるって言葉じゃ足りないくらいに思ってる。いつもお前だけ気にしてる。」
「……」
「お前が駄目になったら助けてやるって決めてるし、お前を助けられるよういつも気を付けてる。お前が傷つかないように守ってやるし、お前を傷つける奴を許さない。深く人を思うってこういう事だってもう分かる。それも言葉の上でと全然違う。僕はこれ以上思えないくらいに思ってるじゃんか。」
宗介が言う事は、聞けば聞くほど恋への愛情に溢れていて、だんだん擽ったくなった恋は照れくさくなってつい言った。
「もおいいったら、言わなくて」
非常にイラっと来た宗介は笑顔で聞いた。
「ごめんは?」
「ごめん」
宗介はふう、と拳に息をかけると、恋のあたまのてっぺんに勢いよく垂直に落とした。
「痛っ」
「余計に食ったね。鬱陶しいんだよお前は。ったく。」
宗介はべそを描き出した恋を見下ろした。
「浮気者はそれ相応の目に合うよ。嘘つきを恥じろよね大体。ほんとに、一発殴らせてじゃ済まないからね。」
宗介はしかめっ面で首を傾げた。
「良い?もう分かったね?。次やったら、本っ当にただじゃ置かないから。」
恋は、また、浮気の本当の理由を言いそびれた。
「分かった?」