幼なじみは狐の子。2
宗介は、新聞部が嫌いだった。
自分と恋についてあることないことを書くし、恋愛事件の報道しかしないのも、馬鹿だと思っていた。
伊鞠と桂香について、変な人達、と思っていて、半分不審者扱いしていたが、その変人達が役に立つこともある。
委員会から戻ってきた宗介は、教室で帰りの支度をしていた。
宗介は支度が早い。
ドアを開けてすぐに教室を出ようとした宗介は、入れ違いに誰かとぶつかりそうになった。
「すみません」
反射的に言ってから、相手を見ると、そこに居たのは新聞部の伊鞠だった。
「……。」
「上野くん。」
宗介は表情を戻して、無視して出ていこうとした。
すると、伊鞠が大きな声で呼び止めた。
「スクープ!」
「……何ですか」
宗介が嫌な顔をして伊鞠を見返す。
腕を組んだ伊鞠は、口を開いた。
「スクープよ、上野くん。あなたに関する情報を知りたいと思って?」
「……良いです、要らない」
宗介が言って、歩き出そうとすると伊鞠が前に回った。
「あなたと新田さんに関することよ。良いの?」
「恋に?」
宗介が訝しげにすると、伊鞠は浅く笑った。
「知らないのは彼氏ばかり。かわいそうに」
「何ですか、失礼な。恋がどうかしたなら言ってくださいよ。」
「新田さんがね。」
伊鞠が言った。
「どうしようかな、言おうかな、言うのやめようかなあ」
「……。」
あからさまにふざけたリアクションに宗介が無言でいると、伊鞠が口を開いた。
「なーんて冗談冗談。教えてあげるわ。さる確かな情報筋によれば、新田さん、今度の日曜、樋山くんとデートするそうなのよ。」
「!」
「それを記事にしても良いんだけど、ちょっと都合があるから、教えといてあげようと思って。」
「……」
宗介は無表情だ。
「場所は、自然公園。時間は10時頃。」
黙ってしまった宗介に、伊鞠が聞いた。
「キミは連れ戻すの?」
「……別に。」
「新聞部は、どちらかといえばカップルを優先するのよ。」
伊鞠が言った。
「心の触れ合いがある仲良しカップルを推奨しているの。一応だけど。それじゃ頑張ってね。」
踵を返し立ち去った伊鞠に、1人残された宗介は、しかめっ面でしばらくその場に突っ立っていた。