Unknown




───ブー、ブー、ブー。


「んん⋯⋯」


「⋯⋯なに⋯⋯」


バイブ音とけたたましい着信音に起こされる。

鳴っていたのは私のスマホ。


身体を起こして手に取る。

『着信:会社』の文字を見て一気に目が覚めた。


「⋯⋯っ」


「⋯⋯だれ?」


「⋯⋯かい、しゃ」


震える声でそう言うと、コーダイも覚醒したように起き上がった。


「大丈夫、おれがいる」


「⋯⋯ん」


スマホを持っていない手を握られる。

少し安心して、未だに鳴り止まないスマホの通話ボタンをタップした。


『おい、はよ来いよ、今何時だと思ってんだよ』

「⋯⋯」

『⋯⋯何、まさかガチで辞めんの?』

「⋯⋯」

『⋯⋯ああ、そう。お前、やっぱ自分のことしか考えねえんだ。引き継ぐこっちの身にもなってくんね?』

「⋯⋯」

『まーただんまりかよ。はあ、これだから女は』

「ご迷惑をおかけしました。失礼します」

『は?ちょ、』


スピーカーはオフにしていたけど、あれだけの怒鳴り声だからコーダイにも聞こえていたようだ。

口パクで「切れ」と言われたから、勇気が出て思いっきり切ってやった。


< 23 / 37 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop