ちょっとだけ、ほろ苦い
そして、そんな私に話しかけてくれたのが楓さんだった。



「うちで休んできます？」



彼が指したのは、すぐそこにあるカフェ。



看板にはオシャレな字体でカフェarceと書かれている。



「あっ、ありがとうございます」



あの日雨で冷えてしまった私の体を温めてくれたのも、今日と同じカフェオレだった。



こういう趣のあるカフェに入るのは初めてだったから変に緊張していたけれど、楓さんの親切な接客ですぐに緊張はほぐれた。



苦いのはあまり好きじゃない私が、唯一飲めそうなメニュー、カフェオレを注文して席に着く。



キッチンでカフェオレを作る楓さんはとても穏やかな表情だった。



初めて、ここのカフェオレを飲んだ時のことは忘れない。



「どうかな。お口に合う？」



楓さんはわざわざ私に構ってくれて素直に美味しいですと言った。



本当は少し苦かったんだけど。



それからというもの私は毎週ここのカフェに通っている。



楓さんに会うため、カフェオレを飲むために。



最初は苦いと感じていたカフェオレも段々と飲めるようになった。
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