私の花言葉
蝉の声がより一層暑さを強調し、耐えきれなくなり私はいつもと違う帰り道を通ることにした。


たまにはいいよね?


近くの裏路地に入ると、ひんやりとした空気が私の体を纏う《まとう》気がした。


両隣の建物はシャッターがいつも降りているから、室外機の暑さもなく先程まで溢れ出ていた滝汗が少し止まってきた。


ハンカチなんてオシャレなものは持っていない。


私は腕で額にかいた汗を思いっきり拭い、タオル代わりにシャツでふいた。


「あれ、なんか甘い香りがする」


ふと私の鼻を柔らかい甘さがかすめた。
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