クラックが導いた、追想の宝石店。
 お目当ての店主がいないとなれば、もうここに来ることもないだろう。
 そう思った私は、久しぶりに店の中を見てみることにした。

 百貨店などのジュエリーショップにはない原石や、珍しい宝石もある。昔はあまり近づくと止められたけれど、少し大人になったんだからむやみに触らなければ止められることもないだろう。
 そうして買いもしない商品を見ていると、店主の男性が声を掛けてきた。

「じいちゃんを知ってるってことは……もしかしてここをたまり場にしていた小学生って君のことかな?」

 カウンターから出てきてわざわざ近くに寄ってきた彼に、私は思わず眉を寄せる。
 近づかれて警戒したわけじゃない。単純に、その言葉が不満だったんだ。

「たまり場……」

 確かに秘密基地みたいな扱いはしていたけれど……【たまり場】なんて言われたら私たちが不良みたいに聞こえるじゃない。
 心外だ、と不満に思っていると、彼はさらに私の不満のツボを突いてきた。

「聞いた話だともう一人いるみたいだけど?」
「……彼は来づらいって言ってたので。それに彼女ができたし、多分ここには来ないです」

 実際に私たちを知っているおじいさん店主に言われたならまだしも、話を聞いただけの人にそこを突いて欲しくなかった。
 そんな不満と、そんなことを言われる原因になった累への不満で棘のある言い方になってしまう。

 八つ当たりになってしまったかな? って反省したのも束の間。男性はさらに突っ込んだ質問をしてきた。
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