ぼくらは群青を探している
そんな畏れ多い、というか正直意味が分からなすぎて怖い、冗談でもそんなこと言われたら困る、と色々な文句 (?)が口をついて出る前に蛍さんはサラッと頷いたどころか私にとんでもない爆弾を投げてくれた。
呆然と振り向くも、私には蛍さんが冗談で言っているのかなんなのか全く分からない。蛍さんのことはまだ分類はおろか、観察とパターン化さえできていないのだ。そんな状態で冗談なのかなんなのか分かるはずがない。
……けど、さすがに、こんなにも人が揃っている場であっけらかんとなんの躊躇いもなく、他人の広げた風呂敷に乗っかって飛ぶような告白をするわけがない。それに何より私には蛍さんに気に入られる理由がない。だからここで必要なのは、冗談に対して冗談めいた返事をすること。
「……私、ピンクブラウン恐怖症なんで無理ですね」
「ひでーこと言いやがる女だな」
冗談に聞こえたのか、冗談に聞こえたとして適切だったのか、酷かったのか酷くなかったのかも分からなかった。ただ蛍さんは笑い飛ばしてくれたので、ほっと胸を撫で下ろす。
「ま、とりあえず俺が言いたかったのはこんなとこで」蛍さんはそのまま立ち上がり「そこの三人、今日の集会忘れんな。で、桜井、てめぇはケータイ買え。じゃな」
「じゃあね」
まるで嵐のように、蛍さん達はこの教室で騒ぐだけ騒いでいなくなった。そっと辺りを見回すまでもなく「桜井と雲雀が群青に入ったって噂、マジだったんだ」「五組でラッキーじゃね」「逆だろ、あの二人に喧嘩売ったら群青に喧嘩売ったことになるんだぞ」と囁き声が聞こえる。
でも桜井くんはそれを意に介す様子もなく、蛍さんのいなくなった椅子に座り「そんなにケータイいるかなあ」と首を捻るだけだ。
「いるだろ。お前はいらなくても周りはお前からの連絡が要るんだよ」
「ヤバい、モテ期かも」
「春なのはテメェの頭だけだ」
「ねー、結局なんでわたしは群青入っちゃだめなの?」
「俺に聞かれても……」
桜井くんの視線は雲雀くんに動く。多分助けを求めているのだろうけど、雲雀くんは無視してそのまま私に視線を寄越した。
「つか逆じゃね。なんで三国、群青なんか入ってんだ。姫じゃあるまいし」
「姫?」
「蛍さんの彼女でもねーのにってこと。大体、チームのトップの彼女が姫だ」
……なるほど。チームのリーダーは要人に等しいのでその彼女も準要人ということか。
「でも姫って別に要らなくね?」
「姫はいらねーけど彼女いるヤツはいくらでもいるだろ」
「それもそっか」
「で、なんで三国さんはよくてわたしはダメなの?」
ふくれっ面の牧落さんを雲雀くんは無視、桜井くんはどうにか返事はしようとしてるけどまともな返事ができない。でも仕方がない、蛍さん以外、誰一人理由なんて分かっていないのだから。
「……私が危ない目に遭ったから心配してのことだと思う、多分」
せいぜい言えるのはその程度だし、牧落さんがそれで納得するとも思えなかった。
「……そういう?」
「……そういう」
「……なるほど?」
ただ、意外にも牧落さんはそれ以上聞いてこなかった。「危ない目」と聞けば深く聞いてはいけないと察したのか、なんならそのまま考え込むように黙った。
「……そういうことなら仕方ないか……」
呆然と振り向くも、私には蛍さんが冗談で言っているのかなんなのか全く分からない。蛍さんのことはまだ分類はおろか、観察とパターン化さえできていないのだ。そんな状態で冗談なのかなんなのか分かるはずがない。
……けど、さすがに、こんなにも人が揃っている場であっけらかんとなんの躊躇いもなく、他人の広げた風呂敷に乗っかって飛ぶような告白をするわけがない。それに何より私には蛍さんに気に入られる理由がない。だからここで必要なのは、冗談に対して冗談めいた返事をすること。
「……私、ピンクブラウン恐怖症なんで無理ですね」
「ひでーこと言いやがる女だな」
冗談に聞こえたのか、冗談に聞こえたとして適切だったのか、酷かったのか酷くなかったのかも分からなかった。ただ蛍さんは笑い飛ばしてくれたので、ほっと胸を撫で下ろす。
「ま、とりあえず俺が言いたかったのはこんなとこで」蛍さんはそのまま立ち上がり「そこの三人、今日の集会忘れんな。で、桜井、てめぇはケータイ買え。じゃな」
「じゃあね」
まるで嵐のように、蛍さん達はこの教室で騒ぐだけ騒いでいなくなった。そっと辺りを見回すまでもなく「桜井と雲雀が群青に入ったって噂、マジだったんだ」「五組でラッキーじゃね」「逆だろ、あの二人に喧嘩売ったら群青に喧嘩売ったことになるんだぞ」と囁き声が聞こえる。
でも桜井くんはそれを意に介す様子もなく、蛍さんのいなくなった椅子に座り「そんなにケータイいるかなあ」と首を捻るだけだ。
「いるだろ。お前はいらなくても周りはお前からの連絡が要るんだよ」
「ヤバい、モテ期かも」
「春なのはテメェの頭だけだ」
「ねー、結局なんでわたしは群青入っちゃだめなの?」
「俺に聞かれても……」
桜井くんの視線は雲雀くんに動く。多分助けを求めているのだろうけど、雲雀くんは無視してそのまま私に視線を寄越した。
「つか逆じゃね。なんで三国、群青なんか入ってんだ。姫じゃあるまいし」
「姫?」
「蛍さんの彼女でもねーのにってこと。大体、チームのトップの彼女が姫だ」
……なるほど。チームのリーダーは要人に等しいのでその彼女も準要人ということか。
「でも姫って別に要らなくね?」
「姫はいらねーけど彼女いるヤツはいくらでもいるだろ」
「それもそっか」
「で、なんで三国さんはよくてわたしはダメなの?」
ふくれっ面の牧落さんを雲雀くんは無視、桜井くんはどうにか返事はしようとしてるけどまともな返事ができない。でも仕方がない、蛍さん以外、誰一人理由なんて分かっていないのだから。
「……私が危ない目に遭ったから心配してのことだと思う、多分」
せいぜい言えるのはその程度だし、牧落さんがそれで納得するとも思えなかった。
「……そういう?」
「……そういう」
「……なるほど?」
ただ、意外にも牧落さんはそれ以上聞いてこなかった。「危ない目」と聞けば深く聞いてはいけないと察したのか、なんならそのまま考え込むように黙った。
「……そういうことなら仕方ないか……」