ぼくらは群青を探している
 ……考えすぎだろうか。きっと考えすぎだ。

 そもそも、新庄と蛍さんが手を組んでる可能性だって、あるといえばあるけどないといえばない。どちらかに転がる決定的な理由は何もない。

 拉致されたのが牧落さんでなく私だったことも同じ。蛍さんは、私と桜井くん達が仲がいいことは有名だなんて話していたし、それは蛍さんしか言っていないことだから信用できないとしても、海で黒鴉とかいうチームにも見られていたし。

 どちらの可能性もあるから、無駄に疑うべきではない。でも同時に、無暗に信用すべきでもない。


「……なんか、蛍さんって謎だなって」

「そーか?」

「謎なのは三国を気に入ってることくらいだよな。でも蛍さんは南中で、三国は東中で……接点ないよな」

「……全く覚えがない」


 珍しい苗字だし、あの見た目だし、接点があれば覚えていないはずがない。蛍さんに会ったのは、正真正銘、桜井くんに勉強を教えてた日が初めてだ。

 私に限って忘れてることもないだろうし……と首を捻っていると、不意に肩を力強く掴まれた。陽菜だ。


「……どうしたの」

「……どうしたのじゃねーだろ」


 キッと大きな釣り目が私を睨みつける。なんなら両肩を掴みなおされた。


(ブルー・)(フロック)のメンバーって何? なんでそんなことになってんの? いつの間に何があったの!?」

「……桜井くんと雲雀くんとしょっちゅう一緒にいるからさっき来てた蛍さんに誘われて」

(ブルー・)(フロック)の蛍さんだよね!? つか隣にいたのあの能勢さんでしょ!? ヤバ! 推し変わりそう! 能勢さんの色気やばいしやっぱ年上に勝るもんないわ!」


 もっと責められるのかと思っていたけれど、陽菜の中で雲雀くんと能勢さんの順位が入れ替わっただけだった。入れ替わったというか、能勢さんが乱入したことで自然に雲雀くんが降下した。


「で、で? なんで蛍さんに告白されてんの?」

「いやあれ冗談だし……」

「でも蛍さんが三国気に入ってんのは本当じゃん」

「桜井くん、余計なこと言わないで」

「ヒッ」


 つい冷ややかな声を出してしまったせいか、桜井くんが縮み上がるふりをした。


「え、で、(ブルー・)(フロック)のメンバーって? 姫とは違うの?」

「……違うんじゃないかな。だって……」


 だって、私を誘った理由がありそうな口ぶりだった……。……そういえば、桜井くんと雲雀くんが群青に入って得するのは蛍さんだけじゃなくて能勢さんもか……。


「だって?」

「……だって、なんとなく、ね」

「お前はまたそうやってボーッとした返事ばっかしやがって。少しくらい考えろよ、危ないなー」


 考えてはいるのだけれど、人前にはっきり出すほどの確固たる根拠や自信のある答えを出せていないのだ。


「つか、池田?」

「えっなに!」


 雲雀くんが突然陽菜の苗字を呼ぶので、陽菜が興奮で跳び上がった。


「池田って蛍さんのこととか知ってんの。東中だろ?」

「中学は違うけど、蛍さんって有名じゃん。普通知ってるんじゃない、英凜とかはボーッとしてるから知らなかったけど」


 なんだか最近みんなに同じことを言われる気がする。雲雀くんも「ああ、なるほど」なんて頷いてるし、桜井くんのいうとおり私のことをボケーッとしてると思っているのだろう。


「能勢さんは?」

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