ぼくらは群青を探している
「能勢さんは二年エースだから」ぐっと陽菜は親指を立てながら「クソイケメンで高身長で色気ダダ漏れ、しかもめっちゃ頭いいからね! 二年特別科のトップ、能勢さんでしょ」
「いやそれは知らねーけど」
「なんか群青じゃなきゃ全然早稲に推薦できたのにみたいに言われて『いや僕は実力で入れるんで大丈夫です』って言ったらしいよ。カッコイー!」
雲雀くんは陽菜の勢いに押されてたじろいでいる。そりゃそうだ、男子が男子の魅力を語られても困る。
「……ていうか、陽菜、いつもそういう話ってどこで仕入れてくるの」
「いや普通にマジでお前が知らないだけでみんな知ってるから。あ、でも能勢さんの話はバスケで聞いた」
陽菜は女バスに入っていて、その結果男バスとも仲が良く、よく情報交換をするのだと言っていた。おそらくそれだ。
「……じゃ三国と蛍さんはマジで関係ねーんだな」
「あ、もう全然。蛍さんに会ったの、今日が初めてだし。普通に一目惚れなんじゃね、英凜可愛いし」
「理屈が分からないものを可能性として考慮するべきじゃないと思う」
「英凜、マジでそういうとこ直したほうがいいと思う」
私が群青にいることで利益になること……私を群青の監視下に置く理由ができること……? そんなの、ただのトートロジーだ。
考えても考えても、答えは出ない。
**
青海神社は、草木は適度に刈られているものの、手水もなく明かりもなくの古びた神社だった。
住所的には私の家から遠くないし、なんならギリギリ藍海区の隣にあるような気もした。ただ、住宅街の奥の奥にあって、見かけたことはあっても来たことはなかった。それこそ、青海神社なんて聞いてもピンとこなかったくらいだ。
その中にある社務所か休憩所みたいなものの一つの前に、蛍さんは横柄な態度で座り込んでいた。まるで自分が宮司か神主かみたいな態度だ。
「全員、揃ったな?」
いや、それどころか、まるで神様だ。群青のメンバーは、私と桜井くんと雲雀くんを含め、ずらりと参道に整列していて、社の前にいる蛍さんを拝もうとしているかのようだった。人数は軽く一クラス分だろうか。それが不良チームとして多いのか少ないのかも分からないくらい、私は場違いだった。なんなら着いた時から「女だ」「誰の?」「永人さんじゃね」と囁かれていた。多分蛍さんの隣にいなければすぐに首根っこを摑まえられて尋問されていたと思う。
「じゃ、集会、始めるぞ」
そんな蛍さんの隣に、桜井くん、雲雀くんそして私の順に立たされて、正直死にそうだった。
いかんせん、目の前に並んでいるのは灰桜高校普通科の問題児を煮詰めた結果といっても過言ではない。しかも当然のように女子がいない、三学年分 (なんならおそらく大半は二年と三年)の男子に不躾にじろじろと見られ、見世物にでもなった気分だった。多分マネキンはいつもこんな気持ちなんだろう。
ただ……、新庄のせいだろうか、私の心臓は大人しく、鳴りを潜めていた。もしかしたら、あれくらいの衝撃を受けないと心臓は反応しない仕様に変わってしまったのかもしれない。
「噂で聞いてるヤツもいると思うが、この場で正式に知らせる。西中の桜井と雲雀が群青に入った。どっちがどっちか、知らないやつはいねーな?」
「いやそれは知らねーけど」
「なんか群青じゃなきゃ全然早稲に推薦できたのにみたいに言われて『いや僕は実力で入れるんで大丈夫です』って言ったらしいよ。カッコイー!」
雲雀くんは陽菜の勢いに押されてたじろいでいる。そりゃそうだ、男子が男子の魅力を語られても困る。
「……ていうか、陽菜、いつもそういう話ってどこで仕入れてくるの」
「いや普通にマジでお前が知らないだけでみんな知ってるから。あ、でも能勢さんの話はバスケで聞いた」
陽菜は女バスに入っていて、その結果男バスとも仲が良く、よく情報交換をするのだと言っていた。おそらくそれだ。
「……じゃ三国と蛍さんはマジで関係ねーんだな」
「あ、もう全然。蛍さんに会ったの、今日が初めてだし。普通に一目惚れなんじゃね、英凜可愛いし」
「理屈が分からないものを可能性として考慮するべきじゃないと思う」
「英凜、マジでそういうとこ直したほうがいいと思う」
私が群青にいることで利益になること……私を群青の監視下に置く理由ができること……? そんなの、ただのトートロジーだ。
考えても考えても、答えは出ない。
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青海神社は、草木は適度に刈られているものの、手水もなく明かりもなくの古びた神社だった。
住所的には私の家から遠くないし、なんならギリギリ藍海区の隣にあるような気もした。ただ、住宅街の奥の奥にあって、見かけたことはあっても来たことはなかった。それこそ、青海神社なんて聞いてもピンとこなかったくらいだ。
その中にある社務所か休憩所みたいなものの一つの前に、蛍さんは横柄な態度で座り込んでいた。まるで自分が宮司か神主かみたいな態度だ。
「全員、揃ったな?」
いや、それどころか、まるで神様だ。群青のメンバーは、私と桜井くんと雲雀くんを含め、ずらりと参道に整列していて、社の前にいる蛍さんを拝もうとしているかのようだった。人数は軽く一クラス分だろうか。それが不良チームとして多いのか少ないのかも分からないくらい、私は場違いだった。なんなら着いた時から「女だ」「誰の?」「永人さんじゃね」と囁かれていた。多分蛍さんの隣にいなければすぐに首根っこを摑まえられて尋問されていたと思う。
「じゃ、集会、始めるぞ」
そんな蛍さんの隣に、桜井くん、雲雀くんそして私の順に立たされて、正直死にそうだった。
いかんせん、目の前に並んでいるのは灰桜高校普通科の問題児を煮詰めた結果といっても過言ではない。しかも当然のように女子がいない、三学年分 (なんならおそらく大半は二年と三年)の男子に不躾にじろじろと見られ、見世物にでもなった気分だった。多分マネキンはいつもこんな気持ちなんだろう。
ただ……、新庄のせいだろうか、私の心臓は大人しく、鳴りを潜めていた。もしかしたら、あれくらいの衝撃を受けないと心臓は反応しない仕様に変わってしまったのかもしれない。
「噂で聞いてるヤツもいると思うが、この場で正式に知らせる。西中の桜井と雲雀が群青に入った。どっちがどっちか、知らないやつはいねーな?」