ぼくらは群青を探している
なんならこの二人の認知度は群青の人にとって常識レベルだし、この二人と私が並べられている状態を俯瞰すると一層居心地が悪かった。
「……ブルー・フロックじゃないのかな?」
それはさておき〝群青〟と書いて〝ブルー・フロック〟と読むのがこのチームではないのだろうか? つい桜井くんに小声で囁くと「長いから〝ぐんじょう〟ってみんな呼ぶんだって」とのことだった。なるほど、と頷く私を雲雀くんが見ていたけれど、何を言いたいのかは分からなかった。
「で、隣が三国英凜だ」
そして私の紹介もされる、と……。さっきの予想とは違って、名前を呼ばれた瞬間に心臓が一瞬跳ねた。ただ、ほんの一瞬で、すぐに収まった。
「おい颯人」
「はいっ!」
なぜか、群青 (私も倣ってそう呼ぶことにしよう)の中の一人が名前を呼ばれた。
返事をしたのは、少しくせ毛交じりの可愛い顔をした人だった。暗くてよく分からないけれど、きっとその髪色はダークブラウンで、学ランの着方も、優等生とまでは言わないけれど普通科にありふれた着崩し方をしている程度の、そんなに派手なものではなかった。なんなら学年徽章もちゃんとつけていて、同級生だと分かる。
私達に続いて呼ばれるということは、私達と同じく群青メンバーと告知される予定と考えるのが当然だけれど、その人は私達と違って「最初から群青のメンバーです」みたいな顔をして列に混ざっていた。首を傾げていると、蛍さんは私を親指で示した。
「お前の件、三国が立ち会ってやる。よく頭下げときな」
「はいっ! すみません三国さん、よろしくお願いします!」
「……はい?」
そしていきなり頭を下げられた。目を白黒させる私の隣で桜井くんと雲雀くんは「六組の中津じゃん」「知ってんのか」「うん。舜とよくバカやってる」なんて話している。
「……え、いや、これ一体……え……?」
「三国、詳しいことは今度説明するけど、まあ頼むな」
「え……?」
「今回、颯人のバカがやらかしやがった。お前らマジでいい加減にしろ、声かけてくる女にろくなやつはいないつってんだろ。ナンパはすんな、ダセェから。で、ナンパはされんな、危ねぇから。分かったか?」
うぃっすだかおうだかなんだか分からない野太い返事を聞きながら、私達だけが状況を理解できずに困惑し続ける。きっといまの私の頭上にはクエスチョンマークがたくさん浮かんでいるに違いない。
「……あの、蛍さん……一体なにが……」
「おい颯人、前出てきな」
「はいっ」
蛍さんは石階段の上に座って頬杖をついたまま「さっきチラッと言ったけど、このバカがなぁ」と親指をその中津くんに向ける。
「他のチームの幹部の女に手出しやがった。それだけならただの喧嘩でいいんだけどな、その女が厄介で、颯人に無理矢理されただのなんだの喚き始めたんだ。ここまで来れば分かるだろ、警察に駆け込まれたくなけりゃ金持ってこい、だ」
トラブルのことは分かった。ただそのトラブルについて私がよろしくされる理由は分からなかった。
頭の上にクエスチョンマークを浮かべたままの私に、蛍さんはそのまま続ける。
「で、いわく颯人に無理矢理されたから怖くて男と話せねー、女に金持ってこさせろってごねやがった。そういうわけで、三国、よろしくな」
「…………よ……ろ……?」
「俺達の代わりに白雪の幹部の女に会ってこい。金持って行けなんてお使いさせるつもりはねえ、ぶちかましてこの話ポシャらせて来い」
…………。
つまり、中津くんが美人局に遭い、恐喝をされているので、その美人局をしている女に会って……恐喝話を握り潰してこい、と。
「……はい?」
「……ブルー・フロックじゃないのかな?」
それはさておき〝群青〟と書いて〝ブルー・フロック〟と読むのがこのチームではないのだろうか? つい桜井くんに小声で囁くと「長いから〝ぐんじょう〟ってみんな呼ぶんだって」とのことだった。なるほど、と頷く私を雲雀くんが見ていたけれど、何を言いたいのかは分からなかった。
「で、隣が三国英凜だ」
そして私の紹介もされる、と……。さっきの予想とは違って、名前を呼ばれた瞬間に心臓が一瞬跳ねた。ただ、ほんの一瞬で、すぐに収まった。
「おい颯人」
「はいっ!」
なぜか、群青 (私も倣ってそう呼ぶことにしよう)の中の一人が名前を呼ばれた。
返事をしたのは、少しくせ毛交じりの可愛い顔をした人だった。暗くてよく分からないけれど、きっとその髪色はダークブラウンで、学ランの着方も、優等生とまでは言わないけれど普通科にありふれた着崩し方をしている程度の、そんなに派手なものではなかった。なんなら学年徽章もちゃんとつけていて、同級生だと分かる。
私達に続いて呼ばれるということは、私達と同じく群青メンバーと告知される予定と考えるのが当然だけれど、その人は私達と違って「最初から群青のメンバーです」みたいな顔をして列に混ざっていた。首を傾げていると、蛍さんは私を親指で示した。
「お前の件、三国が立ち会ってやる。よく頭下げときな」
「はいっ! すみません三国さん、よろしくお願いします!」
「……はい?」
そしていきなり頭を下げられた。目を白黒させる私の隣で桜井くんと雲雀くんは「六組の中津じゃん」「知ってんのか」「うん。舜とよくバカやってる」なんて話している。
「……え、いや、これ一体……え……?」
「三国、詳しいことは今度説明するけど、まあ頼むな」
「え……?」
「今回、颯人のバカがやらかしやがった。お前らマジでいい加減にしろ、声かけてくる女にろくなやつはいないつってんだろ。ナンパはすんな、ダセェから。で、ナンパはされんな、危ねぇから。分かったか?」
うぃっすだかおうだかなんだか分からない野太い返事を聞きながら、私達だけが状況を理解できずに困惑し続ける。きっといまの私の頭上にはクエスチョンマークがたくさん浮かんでいるに違いない。
「……あの、蛍さん……一体なにが……」
「おい颯人、前出てきな」
「はいっ」
蛍さんは石階段の上に座って頬杖をついたまま「さっきチラッと言ったけど、このバカがなぁ」と親指をその中津くんに向ける。
「他のチームの幹部の女に手出しやがった。それだけならただの喧嘩でいいんだけどな、その女が厄介で、颯人に無理矢理されただのなんだの喚き始めたんだ。ここまで来れば分かるだろ、警察に駆け込まれたくなけりゃ金持ってこい、だ」
トラブルのことは分かった。ただそのトラブルについて私がよろしくされる理由は分からなかった。
頭の上にクエスチョンマークを浮かべたままの私に、蛍さんはそのまま続ける。
「で、いわく颯人に無理矢理されたから怖くて男と話せねー、女に金持ってこさせろってごねやがった。そういうわけで、三国、よろしくな」
「…………よ……ろ……?」
「俺達の代わりに白雪の幹部の女に会ってこい。金持って行けなんてお使いさせるつもりはねえ、ぶちかましてこの話ポシャらせて来い」
…………。
つまり、中津くんが美人局に遭い、恐喝をされているので、その美人局をしている女に会って……恐喝話を握り潰してこい、と。
「……はい?」