ぼくらは群青を探している
「でもどうすんだ、ポシャらせるだけじゃなくて今後群青に手出させねぇってなるとハードルは上がるぞ」

「……恐喝には脅迫で返すといいんじゃないでしょうか」


 警察に駆け込むぞという脅しがきくのは、なにも中津くんだけではない。美人局だということさえ証明できればあとは(いも)づる式だ。


「美人局は立派な犯罪です。彼らが持ってる中津くんの動画は諸刃の剣で、中津くんが恐喝される材料であると同時に、彼らが美人局をしていた証拠でもあります。美人局の証拠を掴めば中津くんの件がポシャるだけでなく今後群青に手を出されることもなくなるかと」

「目には目を、歯には歯をってか」


 いい案だ、と雲雀くんは頷いた。


「問題はその証拠の掴み方だな。連中のとこに押し入るわけにもいかねーし」

「……こういうとき、典型的なのはいわゆるおとり捜査じゃない?」

「誰かに美人局に遭わせるってことか?」蛍さんは眉を吊り上げて「そんな上手くいくかね。美人局なんてそもそも仲間が部屋の近くで控えてんだ。現場押さえようとしたらソイツらとかち合う」

「逆にこっちがなんもしてない動画撮ればいんじゃないすか?」


 雲雀くんはノートに「動画 (白雪)」と書いた。その下には「動画 (何もしてない)」と書く。


「なんもしてない証拠を持って、相手から『ヤッたんだから金払え』って言われたら、その発言が美人局の証拠になりますよね」


 そして「金払え」と書き加え、それに向けて「動画 (何もしてない)」から矢印を引く。眠そうにノートを見ていた桜井くんは「ああ……なるほどな」と頷く。


「確かに、そう恐喝された証拠持っといて、動画見せてヤッてませんけどどうしてくれるんですかってなるわけだ。まあその動画はこっちで撮れるとしても、白雪のヤツが撮る動画に何も映らないようにしないといけないよな」

「そもそも白雪はどういう動画撮ってんだ? おい颯人、お前、証拠だっつー動画渡されたんだろ。見せろ」

「……えっここでですか?」


 中津くんの目が泳いだ。


「当たり前だろ、誰のためにこんなことやってると思ってんだ。安心しろよ、お前のなんか見たくねえから」

「いや俺は三国さんのこと言ってんすけど!」


 ……それはそうだ。中津くんがなにをどこまでどうしたのかはさっぱり知らないけど、私だって同級生の男子のあられもない姿なんて見たくない。そこは全面的に中津くんに賛成だ。

 ただ、相手の手の内を知っておくべきなのも事実。


「……あの、どうぞ、みなさんで確認してください」

「……分かりましたよ」


 額を押さえた中津くんは携帯電話を出し、蛍さん達三人がそれを覗き込む。カチカチカチッと中津くんが素早く指を動かしたので、多分音量をゼロにしたのだろう。


「……え、めっちゃ可愛くない?」と桜井くん。


「ガッツリ触ってんじゃんお前。何嘘ついてんだ」と雲雀くん。


「まあ脱がせてるしなあ。これ美人局とかじゃなくて普通にヤッてる図じゃね?」と蛍さん。

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