ぼくらは群青を探している
「これやっぱり無理なんじゃ……」


 ぶつぶつと独り言を言いながらベルトをしめようとして――視界を遮るものの存在に気付いて硬直してしまった。

 スルスルと襖を開けると、桜井くんと雲雀くんはこたつテーブルの前に座って昼間のメモを見ていて、私が入ってきたことに気づいて振り返る。


「……え、めっちゃ似合うじゃん。なに?」

「お前よりイケメンじゃねーか」

「やめて! 今それ俺も思ったけど!」

「やっぱ髪長いと一見して女だよな。長くてもウィッグの中に隠せるもんなのか?」

「ねー三国、髪持って頭の後ろに隠してみて。……おお、イケメンだ」

「一般的にイケメンってどことなく女っぽい顔つか、中性的な顔らしいな」

「自分がイケメンって言ってる?」

「言ってねーよ。……三国、なんで黙ってんだ」

「……やっぱり私には無理だと思う」

「なんでぇ。いいじゃん自信持てよ、イケメンだよ三国」

「……胸が邪魔」


 一向に二人が言及しないから、小さな声でその最大の難点を指摘した。

 途端に桜井くんは固まったし、雲雀くんがそっと目を逸らした。どうやら雲雀くんは気づいていたらしい。でも確かに、自分の体の凹凸(おうとつ)に気付かなかった私がバカだった。

 気まずい沈黙の中で、カチ、コチ、カチ、コチと振り子時計の音だけが静かに響く。この音を一体何回聞けばこの状況を打開するセリフを口にできるのか、私には見当もつかなかった。


「……やっぱ俺がやるかなあ……」


 桜井くんの男前な返事に、深く頷いた。

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