ぼくらは群青を探している

(4)仮面

 週明けの放課後、おとり捜査の段取りを確認すべく、私達は蛍さんのいる三年六組に行く羽目になった。


「……三年の普通科の教室?」


 それを横で聞いていた陽菜が突然反応した。雲雀くんに話しかけられて以来、陽菜は雲雀くん達を遠回しに見ることはなくなり、ごく自然に会話に入ってくるようになっていた。今日もそれだ。


「……マジで英凜、気をつけな。普通科の三年とか獣だから」

「私は羊ってこと?」

「そうだよ。お前なんかパクッと食われるぞ!」

「大丈夫だよ、俺が守ってやるから」


 あまりにもサラリと漫画みたいな発言をした桜井くんに、私達は一斉に視線を向けた。でも桜井くんはどや顔をしているどころか、いつもより一層間抜けな様子でポッキーを食べている。


「……なに?」

「桜井……カッコいいこと言ってるんだからそれ食べるのやめろよ」

「え、なんで」

「ってわけだから気をつけな、英凜。で、今度特別科の二年の教室に行くときは教えて」

「……能勢さんがいるから?」

「モチロン」


 部活に行く陽菜に見送られ、私達は階段を二つ降りる。普通科棟も特別科棟も、一階から順に三年、二年、一年となっている。一・二年生は下駄箱が二階にあるので、一階に足を踏み入れることはなく、私達にとっては未知の階だった。

 その三年の階は、最早魔窟(まくつ)。とりあえず、一階廊下に降りた時点でいつもと見ている光景が違った。まず廊下にはタイヤ痕がある。次に窓ガラスも割れている。正確には窓ガラスが割れているらしく、本来窓ガラスがあるところに段ボールが貼られていた。

 そして当然、三年生がたむろしている。歩けば棒に当たるがごとく、三年生の視線にぶつからずにこの廊下を進む(すべ)はない。ただ、蛍さんが六組にいるからなのか、それとも校舎内だからなのか、煙草を吸っている人はひとりもいない。

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