ぼくらは群青を探している
なぜか蛍さんは額を押さえたし、桜井くんは「あー……まあそうなるよね……」と呟いたし、雲雀くんは参ったように眉間に皺を寄せて瞑目した。三人の反応の理由が分からず能勢さんに再び目で助けを求めると、能勢さんからの優しい眼差しは一層優しくなる。
「……三国ちゃん、ちょっと耳貸して」
「はい?」
「おいやめろ芳喜」しびれを切らしたように蛍さんが口を開き「分かったからお前ら三国連れて社会勉強させてこい。金は颯人に出させろ」
「……どうしよ侑生、これ今後の三国の知識は全部俺らの責任じゃない?」
「いや俺何も教えられることないから」
「お前三国の隣だからってそれはズルいだろ! つか中津の動画見たときに聞かれたから無駄なあがきだ!」
「……あの、結局ラブホって……」
「分かった、分かった。三国、後で教えてやるからそれは口に出さないほうがいい」
「いつ行くの? 今から?」
「いやさすがにこの時間は目立ちますし……」
「つか制服はマズくないですか」
「分かってるねえ、二人とも」
二人は二人して閉口した。何の話かは分からないけれど、文脈的に二人が軽々しく口にしたいことではなかったことは分かる。
「ねえ結局……」
「よし、分かった。飯食ってから集合しよ」
「遅くなって逆に補導されそうだな。あと三国、飯食った後に家なんか出れんのか」
「あー……」
「分かった! じゃあ明日の放課後! で、俺が適当な服持ってくるから三国はそれに着替えて! 分かった!?」
いつにない剣幕の桜井くんには黙って首を縦に振るしかなかった。雲雀くんは頬杖をついた手の中で溜息を吐いているし、蛍さんだって足を揺らしているからイライラしてるし、楽しそうに笑みを浮かべているのは能勢さんだけだ。
「三国ちゃん、代表挨拶なんてしてるのに普通科だからどんなすれ方してるのかなって思ってたんだけど、全然すれてないね? 大丈夫? 群青にいるせいで色んな初めてがなくなるとか」
ゴッ……と能勢さんの肩が蛍さんに蹴られた。さっきから思っていたけれど、足癖が悪いのは桜井くんではなく蛍さんだ。
「なんの初めての話だ?」
「やだなあ、色んなって言ったじゃないですか。例えばバイクの二人乗りとか?」
「はいはい、ほら三国、帰るよー」
桜井くんはそさくさと立ち上がり、まるで子供をあやすように私の腕を引く。なんで自分がこんな扱いをされているのか分からないし、なんで蛍さんが眉間の皺を深くしているのかも分からなかったし、そんな中で能勢さんだけがいつも通りに微笑んでいることにも一層不可解さが募った。
「……あ、えっと……じゃあ、頑張って決行しますので……」
「……分かった頑張れ。おいお前ら二人、三国がなんも知らねーからって手出したらぶち殺すからな」
「こっわ。蛍さん、三国の兄貴かなんか? でもだいじょーぶです、安心と信頼の桜井と雲雀なんで」
「会ったら念仏唱えろって言われる西の死二神が何言ってやがる」
「じゃーね。三国ちゃん、手出されたら正直に言いなよ」
全く状況が理解できずに目を白黒させていたのだけれど、次の日、件のホテルGround-0に連れて行かれても、私には何が問題だったのかさっぱり分からなかった。
「中津の動画見せて」
「ん。場所的にここじゃね?」
「こんなところに置いてたら気付くだろ? いや気付かないもんかな……」
「ビデオあるって分かってたら気付くけど、知らないと気づかないもんなんじゃね」
「……三国ちゃん、ちょっと耳貸して」
「はい?」
「おいやめろ芳喜」しびれを切らしたように蛍さんが口を開き「分かったからお前ら三国連れて社会勉強させてこい。金は颯人に出させろ」
「……どうしよ侑生、これ今後の三国の知識は全部俺らの責任じゃない?」
「いや俺何も教えられることないから」
「お前三国の隣だからってそれはズルいだろ! つか中津の動画見たときに聞かれたから無駄なあがきだ!」
「……あの、結局ラブホって……」
「分かった、分かった。三国、後で教えてやるからそれは口に出さないほうがいい」
「いつ行くの? 今から?」
「いやさすがにこの時間は目立ちますし……」
「つか制服はマズくないですか」
「分かってるねえ、二人とも」
二人は二人して閉口した。何の話かは分からないけれど、文脈的に二人が軽々しく口にしたいことではなかったことは分かる。
「ねえ結局……」
「よし、分かった。飯食ってから集合しよ」
「遅くなって逆に補導されそうだな。あと三国、飯食った後に家なんか出れんのか」
「あー……」
「分かった! じゃあ明日の放課後! で、俺が適当な服持ってくるから三国はそれに着替えて! 分かった!?」
いつにない剣幕の桜井くんには黙って首を縦に振るしかなかった。雲雀くんは頬杖をついた手の中で溜息を吐いているし、蛍さんだって足を揺らしているからイライラしてるし、楽しそうに笑みを浮かべているのは能勢さんだけだ。
「三国ちゃん、代表挨拶なんてしてるのに普通科だからどんなすれ方してるのかなって思ってたんだけど、全然すれてないね? 大丈夫? 群青にいるせいで色んな初めてがなくなるとか」
ゴッ……と能勢さんの肩が蛍さんに蹴られた。さっきから思っていたけれど、足癖が悪いのは桜井くんではなく蛍さんだ。
「なんの初めての話だ?」
「やだなあ、色んなって言ったじゃないですか。例えばバイクの二人乗りとか?」
「はいはい、ほら三国、帰るよー」
桜井くんはそさくさと立ち上がり、まるで子供をあやすように私の腕を引く。なんで自分がこんな扱いをされているのか分からないし、なんで蛍さんが眉間の皺を深くしているのかも分からなかったし、そんな中で能勢さんだけがいつも通りに微笑んでいることにも一層不可解さが募った。
「……あ、えっと……じゃあ、頑張って決行しますので……」
「……分かった頑張れ。おいお前ら二人、三国がなんも知らねーからって手出したらぶち殺すからな」
「こっわ。蛍さん、三国の兄貴かなんか? でもだいじょーぶです、安心と信頼の桜井と雲雀なんで」
「会ったら念仏唱えろって言われる西の死二神が何言ってやがる」
「じゃーね。三国ちゃん、手出されたら正直に言いなよ」
全く状況が理解できずに目を白黒させていたのだけれど、次の日、件のホテルGround-0に連れて行かれても、私には何が問題だったのかさっぱり分からなかった。
「中津の動画見せて」
「ん。場所的にここじゃね?」
「こんなところに置いてたら気付くだろ? いや気付かないもんかな……」
「ビデオあるって分かってたら気付くけど、知らないと気づかないもんなんじゃね」