ぼくらは群青を探している
「……なんでゼロがラブ。あ、テニスがそっか」
「……そこじゃねーし、一周回って三国はお前レベルのバカなんじゃないかと思えてきた」
「俺レベルってなんだよ!」
「三国、こっち来い」
髪をぐしゃぐしゃと掻き混ぜ、手招きする雲雀くんは明らかに苛立っていた。怒られるのかもしれない……とおそるおそる近寄ると「ほらここ立ちな」と位置を指示された。ベッドを背に雲雀くんと向かい合う。
「……あの……?」
そのままドンッと肩を突き飛ばされ「ぎゃっ」なんて変な声と一緒にベッドに仰向けに沈み込んだ。そんな突き飛ばされるほど酷い回答をしてしまったはずはないのに……と半分体を起こしたとこで、雲雀くんの手に両肩を押さえつけられ、有り得ない力でベッドに戻された。
押さえつけられた肩はびくともしない。肩で力の差を知ってしまったせいか、体は硬直して抵抗する力の入れ方すら忘れたようだった。辛うじて機能しているのは視覚だけで、その視覚が得る情報は、オレンジ色の照明を背にした雲雀くんだけだ。銀髪が淡くオレンジ色に光る代わりに逆光で顔は暗く、そのせいかどこか怖く見えた。
その片手が離れた瞬間、全く似てなんかいないのに、雲雀くんの姿と新庄の姿がだぶった。ドッと心臓が跳ね上がる。
『続きはまた今度ねえ』
心臓がドクリドクリと不気味に、そして激しく鼓動を始めた。
あれ、雲雀くんは何をしようとしてるんだろう。なんで新庄と雲雀くんがだぶったんだろう。雲雀くんがしようとしてることが新庄と同じことだから? 桜井くんがいるのに? あれ、でもそれってもしかして関係ないのかな。桜井くんと雲雀くんがそんなことするはずないって分かってるのに、なんで私はこんなに――怯えてるんだろう。
一気に不安に襲われ、頭が真っ白になりそうだったところに、ピッ――と小さな電子音が聞こえた。
次の瞬間、この部屋にいない男女の声が聞こえ始めた。テレビの音声だ。どうやら雲雀くんが片手を離したのはリモコンを手に取ったからだったらしい。
そして……、いくら私でも、一部の映画の一部に流れるものとしてそれが何の音声なのか知っていた。そして無造作につけたテレビの音がそれということは……。
「ラブホってのはいまテレビでやってることをする場所。分かったか?」
ブツッという音と共にテレビは消え、音声も聞こえなくなったけれどもう遅い。頭には、いつしか見た映画のそういったシーンがフラッシュバックしていた。
途端に、雲雀くんに見下ろされた今の状態が、怖いのか恥ずかしいのかは分からなかったけれど、少なくともそれに似たものに思えて、サッと体を横に向けた。そんなことをしたって雲雀くんの視線から逃れられるわけはなかったのだけれど、体の何かを逃がしたかった。いつの間にか、雲雀くんの手は肩から離れていた。
「……わ、分かりました……」
胸の前で手を握りしめれば、心臓がまだドクリドクリと怯えているのが伝わってくる。
新庄と雲雀くんがだぶった理由が分かった。いまのこの行為で、新庄がいう『続き』の生々しさを知ってしまったからだ。
「おい三国、こっち見ろ」
「え、えと、なんで……」
ぐるんと再び肩を掴んで仰向けにされた。これ以上ないくらいうるさい心臓が再び跳ねる。私を見下ろす雲雀くんの目と、そしてその両手によって、体はベッドに縫い付けられていた。
「……そこじゃねーし、一周回って三国はお前レベルのバカなんじゃないかと思えてきた」
「俺レベルってなんだよ!」
「三国、こっち来い」
髪をぐしゃぐしゃと掻き混ぜ、手招きする雲雀くんは明らかに苛立っていた。怒られるのかもしれない……とおそるおそる近寄ると「ほらここ立ちな」と位置を指示された。ベッドを背に雲雀くんと向かい合う。
「……あの……?」
そのままドンッと肩を突き飛ばされ「ぎゃっ」なんて変な声と一緒にベッドに仰向けに沈み込んだ。そんな突き飛ばされるほど酷い回答をしてしまったはずはないのに……と半分体を起こしたとこで、雲雀くんの手に両肩を押さえつけられ、有り得ない力でベッドに戻された。
押さえつけられた肩はびくともしない。肩で力の差を知ってしまったせいか、体は硬直して抵抗する力の入れ方すら忘れたようだった。辛うじて機能しているのは視覚だけで、その視覚が得る情報は、オレンジ色の照明を背にした雲雀くんだけだ。銀髪が淡くオレンジ色に光る代わりに逆光で顔は暗く、そのせいかどこか怖く見えた。
その片手が離れた瞬間、全く似てなんかいないのに、雲雀くんの姿と新庄の姿がだぶった。ドッと心臓が跳ね上がる。
『続きはまた今度ねえ』
心臓がドクリドクリと不気味に、そして激しく鼓動を始めた。
あれ、雲雀くんは何をしようとしてるんだろう。なんで新庄と雲雀くんがだぶったんだろう。雲雀くんがしようとしてることが新庄と同じことだから? 桜井くんがいるのに? あれ、でもそれってもしかして関係ないのかな。桜井くんと雲雀くんがそんなことするはずないって分かってるのに、なんで私はこんなに――怯えてるんだろう。
一気に不安に襲われ、頭が真っ白になりそうだったところに、ピッ――と小さな電子音が聞こえた。
次の瞬間、この部屋にいない男女の声が聞こえ始めた。テレビの音声だ。どうやら雲雀くんが片手を離したのはリモコンを手に取ったからだったらしい。
そして……、いくら私でも、一部の映画の一部に流れるものとしてそれが何の音声なのか知っていた。そして無造作につけたテレビの音がそれということは……。
「ラブホってのはいまテレビでやってることをする場所。分かったか?」
ブツッという音と共にテレビは消え、音声も聞こえなくなったけれどもう遅い。頭には、いつしか見た映画のそういったシーンがフラッシュバックしていた。
途端に、雲雀くんに見下ろされた今の状態が、怖いのか恥ずかしいのかは分からなかったけれど、少なくともそれに似たものに思えて、サッと体を横に向けた。そんなことをしたって雲雀くんの視線から逃れられるわけはなかったのだけれど、体の何かを逃がしたかった。いつの間にか、雲雀くんの手は肩から離れていた。
「……わ、分かりました……」
胸の前で手を握りしめれば、心臓がまだドクリドクリと怯えているのが伝わってくる。
新庄と雲雀くんがだぶった理由が分かった。いまのこの行為で、新庄がいう『続き』の生々しさを知ってしまったからだ。
「おい三国、こっち見ろ」
「え、えと、なんで……」
ぐるんと再び肩を掴んで仰向けにされた。これ以上ないくらいうるさい心臓が再び跳ねる。私を見下ろす雲雀くんの目と、そしてその両手によって、体はベッドに縫い付けられていた。