ぼくらは群青を探している
結果、その日の問題の時刻、桜井くんは問題のラブホから少し離れた場所、灰桜高校の犠牲者達が声をかけられた場所の近くへ行き、手近な生垣の前で腰を下ろした。その手には雲雀くんの携帯電話がある。
そして私と雲雀くんは少し離れた場所で桜井くんを見守る。私の携帯電話に、雲雀くんの携帯電話から「人生初メールだ!」とメールが送られてきた。
「緊張感がねえ」
「……でも私達もはたから見たらそうだと思う」
私と雲雀くんはといえば、ファッションビルの前で時間を潰す高校生の仲間入りをしている。これからどこへ遊びに行くか悩んでいるカップルのごとく、制服姿で携帯電話を片手にだらだらと時間を潰しているようにしか見えない。
「……雲雀くんの髪、黒いと違和感がすごいね」
なにより、私が緊張感がないと感じてしまう理由は雲雀くんの髪色にあった。
蛍さんに「お前ら金銀光って目立つから染めろバカ」と命令され、二人は渋々、学校のシャワー室で髪を染めていた。といってもスプレーか何からしいので、洗えば落ちるのだそうだ。雲雀くんは黒、桜井くんは茶色。それぞれ地毛の色に戻しているはずなのに、普段見慣れていないせいで違和感がある。しかも、桜井くんはともかく、雲雀くんはピアスホールを隠すために髪を下ろしている。お陰で高校生のコスプレをしているようにしか見えない。
じろじろと眺め回していると「なんだよ」さすがに眉間に皺を寄せられた。
「……すごく、どこにでもいる高校生みたいだなって」
「元からそうだろ」
「…………」
雲雀くんが冗談を言うイメージはなかったので反応に困った。銀髪で赤色のヘアピンをしてズタズタといっていいほど耳に穴が開いているのは、果たしてどこにでもいる高校生なのだろうか。でも確かに、世の高校生のサンプルを無作為に拾って並べて比べたわけでもないのに「どこにでもいる」を観念するのは非論理的だ。
「……三国はどこにいてもどこにでもいる高校生っぽいな」
それならよかった――と答える前にピコンと私の携帯電話に新着メールが届いた。桜井くんが「ヒマ」とまた送ってきている。雲雀くんと一緒に視線を向けると、一人で座り込んだ桜井くんは拗ねたように携帯電話をじっと眺めていた。
「アイツ、人のケータイだからって適当なメールばっか……」
「なんかこれが雲雀くんの送信済みメールに入るんだって思うと笑っちゃう」
絵文字でも使い始めたらもう雲雀くんのキャラ崩壊どころじゃないのだけれど、残念ながら桜井くんはまだ文字を打つ以上には使いこなせないだろう。雲雀くんからの絵文字付きメールは受け取れなさそうだ。
「……三国ってメールとかすんの」
「あんまりしないよ」
おそらく、大してメールが溜まっていない受信メールボックスを見ていたからだろう、雲雀くんの声は疑問形なのに「しないんだろ」と言っていた。
「池田とかメールしそうじゃん」
「陽菜はね。でも私があんまり返さないから」
「女子ってそういうの返さないといけないんじゃねーの」
「陽菜はいいの。私が返さないって分かってるから」
「ふーん。仲良いな」
また新着メールが届いた。メールを開くと「 (ヒДマ`)」と書いてあったので思わず吹き出した。雲雀くんも思わず笑い出したくなりつつ、でも悔しいので堪えるような表情をしていた。
「器用すぎ」
「……顔文字だけ玄人かよ」
「顔が目に浮かんじゃう。目がヒマになってる桜井くん」
そして私と雲雀くんは少し離れた場所で桜井くんを見守る。私の携帯電話に、雲雀くんの携帯電話から「人生初メールだ!」とメールが送られてきた。
「緊張感がねえ」
「……でも私達もはたから見たらそうだと思う」
私と雲雀くんはといえば、ファッションビルの前で時間を潰す高校生の仲間入りをしている。これからどこへ遊びに行くか悩んでいるカップルのごとく、制服姿で携帯電話を片手にだらだらと時間を潰しているようにしか見えない。
「……雲雀くんの髪、黒いと違和感がすごいね」
なにより、私が緊張感がないと感じてしまう理由は雲雀くんの髪色にあった。
蛍さんに「お前ら金銀光って目立つから染めろバカ」と命令され、二人は渋々、学校のシャワー室で髪を染めていた。といってもスプレーか何からしいので、洗えば落ちるのだそうだ。雲雀くんは黒、桜井くんは茶色。それぞれ地毛の色に戻しているはずなのに、普段見慣れていないせいで違和感がある。しかも、桜井くんはともかく、雲雀くんはピアスホールを隠すために髪を下ろしている。お陰で高校生のコスプレをしているようにしか見えない。
じろじろと眺め回していると「なんだよ」さすがに眉間に皺を寄せられた。
「……すごく、どこにでもいる高校生みたいだなって」
「元からそうだろ」
「…………」
雲雀くんが冗談を言うイメージはなかったので反応に困った。銀髪で赤色のヘアピンをしてズタズタといっていいほど耳に穴が開いているのは、果たしてどこにでもいる高校生なのだろうか。でも確かに、世の高校生のサンプルを無作為に拾って並べて比べたわけでもないのに「どこにでもいる」を観念するのは非論理的だ。
「……三国はどこにいてもどこにでもいる高校生っぽいな」
それならよかった――と答える前にピコンと私の携帯電話に新着メールが届いた。桜井くんが「ヒマ」とまた送ってきている。雲雀くんと一緒に視線を向けると、一人で座り込んだ桜井くんは拗ねたように携帯電話をじっと眺めていた。
「アイツ、人のケータイだからって適当なメールばっか……」
「なんかこれが雲雀くんの送信済みメールに入るんだって思うと笑っちゃう」
絵文字でも使い始めたらもう雲雀くんのキャラ崩壊どころじゃないのだけれど、残念ながら桜井くんはまだ文字を打つ以上には使いこなせないだろう。雲雀くんからの絵文字付きメールは受け取れなさそうだ。
「……三国ってメールとかすんの」
「あんまりしないよ」
おそらく、大してメールが溜まっていない受信メールボックスを見ていたからだろう、雲雀くんの声は疑問形なのに「しないんだろ」と言っていた。
「池田とかメールしそうじゃん」
「陽菜はね。でも私があんまり返さないから」
「女子ってそういうの返さないといけないんじゃねーの」
「陽菜はいいの。私が返さないって分かってるから」
「ふーん。仲良いな」
また新着メールが届いた。メールを開くと「 (ヒДマ`)」と書いてあったので思わず吹き出した。雲雀くんも思わず笑い出したくなりつつ、でも悔しいので堪えるような表情をしていた。
「器用すぎ」
「……顔文字だけ玄人かよ」
「顔が目に浮かんじゃう。目がヒマになってる桜井くん」