ぼくらは群青を探している
能勢さんはのらりくらりとしながら物化グループの中に入っていき「どーも、俺担当しますね」「誰がお前なんかに教わるか」「可愛い彼女と別れてから出直せ」「いやもともと付き合ってないですよ」早速勉強とは関係のない話をしている。
「おい三国、お前はここ座りな。んで桜井、お前はここ」
蛍さんは、雲雀くんの後ろにある二つの椅子を順番に叩いた。私が席に着けば、桜井くんは首を傾げつつも蛍さんの命令に従って隣に座った。
「俺も英語教えんの?」
「お前はバカだろ。三国の横で番犬でもやってろ」
「ワンワン」
それでいいのか、桜井くん……! ご丁寧に椅子の上の姿勢までお座りをした犬のようになっている桜井くんに、隣の雲雀くんはツッコミを入れる気さえ起きないかのような白い目を向けている。蛍さんも「うん、そのまま吠えときな」とあしらった。
「んじゃとっとと――」と蛍さんが勉強会開始の合図をしようとすると、例の九十三先輩が英語組に乱入した。
「……あの」
「俺、英語クソ苦手なんだー。よろしくね三国ちゃん」
「ワンワン」
「いいぞ桜井、もっと威嚇しろ」
「やだな永人、俺ちゃんと英語に名前書いてたっしょ?」
九十三先輩が指さす先の黒板には、四角形が書いてあって、その図形内の右下に「英語 ツクミ」と書いてあった。どうやらその四角形が教室内の図を模しているらしく、蛍さんが指示した科目ごとの塊と科目名が書かれている箇所とが一致していた。
「別に三国ちゃんだからって移動したわけじゃないよ」
どうやら九十三先輩の言葉に嘘はないらしい。永人さんもそう判断したらしく、ややばつが悪そうな顔をして自分の肩をハリセンで叩いた。
「……真面目に教われよ。そのために三国の後ろに桜井と雲雀置いてんだからな」
「うわーコワイコワイ。二人に噛みつかれないように気を付けよっと」
既に今にも噛みつきそうな顔をしている雲雀くんを後目に飄々と言ってのけ、九十三先輩は私にニッコリと笑みを向けた。
「よろしくね、三国ちゃん」
「……よろしくお願いします」
「あ、九十三圭次ね、俺。ツクミって読むの、珍しいっしょ」
九十三先輩はキャンパスノートに書かれている名前を見せてくれた。確かに初めてみる苗字だ。
「……すみません、先輩方の名前はまだ覚えてなくて」
「いーよいーよ、そんないっぺんに覚えられないし」
「三国ちゃーん、俺覚えて。俺、中山」
「やまもとー」
「……名簿とかあるといいんですけどね」
次々と名前だけ言われるより、群青メンバー一覧表とかを渡されたほうが覚えやすい。ただそんなものがあるはずない――と思っていたのだけれど九十三先輩は「あ、そう? そんなら名簿あげよっか」なんて言い出した。
「……なんであるんですか?」
「いやフツーにみんなで飯食いに行くとかなったとき集金するじゃん。名簿あったほうが便利っていうので作ったのよ、俺が」
本当に規律に厳しいチームだな、ここは……。九十三先輩は「この間の集金で使ったやつがあるはずなんだよねー」とカバンの中を漁り、ややあってぐしゃぐしゃの紙きれを取り出した。
「はいこれ」
「……ありがとうございます?」
「おいゴチャゴチャ言ってねえでさっさと勉強始めろ」
「はーい、すみません」
名簿は手書きではなく、パソコンを使って作成したものだった。しかもご丁寧に学年まで横に書いてある。九十三先輩は意外と几帳面らしい。
「おい三国、お前はここ座りな。んで桜井、お前はここ」
蛍さんは、雲雀くんの後ろにある二つの椅子を順番に叩いた。私が席に着けば、桜井くんは首を傾げつつも蛍さんの命令に従って隣に座った。
「俺も英語教えんの?」
「お前はバカだろ。三国の横で番犬でもやってろ」
「ワンワン」
それでいいのか、桜井くん……! ご丁寧に椅子の上の姿勢までお座りをした犬のようになっている桜井くんに、隣の雲雀くんはツッコミを入れる気さえ起きないかのような白い目を向けている。蛍さんも「うん、そのまま吠えときな」とあしらった。
「んじゃとっとと――」と蛍さんが勉強会開始の合図をしようとすると、例の九十三先輩が英語組に乱入した。
「……あの」
「俺、英語クソ苦手なんだー。よろしくね三国ちゃん」
「ワンワン」
「いいぞ桜井、もっと威嚇しろ」
「やだな永人、俺ちゃんと英語に名前書いてたっしょ?」
九十三先輩が指さす先の黒板には、四角形が書いてあって、その図形内の右下に「英語 ツクミ」と書いてあった。どうやらその四角形が教室内の図を模しているらしく、蛍さんが指示した科目ごとの塊と科目名が書かれている箇所とが一致していた。
「別に三国ちゃんだからって移動したわけじゃないよ」
どうやら九十三先輩の言葉に嘘はないらしい。永人さんもそう判断したらしく、ややばつが悪そうな顔をして自分の肩をハリセンで叩いた。
「……真面目に教われよ。そのために三国の後ろに桜井と雲雀置いてんだからな」
「うわーコワイコワイ。二人に噛みつかれないように気を付けよっと」
既に今にも噛みつきそうな顔をしている雲雀くんを後目に飄々と言ってのけ、九十三先輩は私にニッコリと笑みを向けた。
「よろしくね、三国ちゃん」
「……よろしくお願いします」
「あ、九十三圭次ね、俺。ツクミって読むの、珍しいっしょ」
九十三先輩はキャンパスノートに書かれている名前を見せてくれた。確かに初めてみる苗字だ。
「……すみません、先輩方の名前はまだ覚えてなくて」
「いーよいーよ、そんないっぺんに覚えられないし」
「三国ちゃーん、俺覚えて。俺、中山」
「やまもとー」
「……名簿とかあるといいんですけどね」
次々と名前だけ言われるより、群青メンバー一覧表とかを渡されたほうが覚えやすい。ただそんなものがあるはずない――と思っていたのだけれど九十三先輩は「あ、そう? そんなら名簿あげよっか」なんて言い出した。
「……なんであるんですか?」
「いやフツーにみんなで飯食いに行くとかなったとき集金するじゃん。名簿あったほうが便利っていうので作ったのよ、俺が」
本当に規律に厳しいチームだな、ここは……。九十三先輩は「この間の集金で使ったやつがあるはずなんだよねー」とカバンの中を漁り、ややあってぐしゃぐしゃの紙きれを取り出した。
「はいこれ」
「……ありがとうございます?」
「おいゴチャゴチャ言ってねえでさっさと勉強始めろ」
「はーい、すみません」
名簿は手書きではなく、パソコンを使って作成したものだった。しかもご丁寧に学年まで横に書いてある。九十三先輩は意外と几帳面らしい。