ぼくらは群青を探している
(2)勧誘
そんな桜井くんと雲雀くんの所業は、すぐさま学校中に知れ渡った。
「雲雀の裏拳はマジ殺人級」
「庄内先輩、顎に一発食らった後、立てなかったらしい」
「桜井の蹴りで歯が二本折れたんだって」
「急に来た三年を二分でぶっとばすとか」
「人間じゃねえ……」
確かに、特等席で観戦していて分かったけれど、桜井くんと雲雀くんのヤバさは、一言でいえば躊躇のなさだった。きっと、大抵は相手を殴ったり蹴ったりすることに躊躇を覚える。それが得体のしれない巨体の先輩だとすればなおさらだ。それなのに、二人にはそれが一切なかった。ともすれば理不尽にさえ思えるほど、決断という思考過程など介在していないのではないかと思えるほど、二人の返事代わりの暴力は早かった。まさしく、命を貰うと決めた死神が鎌を振るのに躊躇しないのと同じ。
「おはよー、三国」
……そして、人の命をもらうのが死神の仕事にして日常だというのなら、桜井くんと雲雀くんにとって、先輩に絡まれそれを撃退するのは日常なのだ。教室で平然と話しかけてきた雲雀くんに、少し頬が引きつった。
「……おはよう」
「災難だったな、三国。昨日、庄内とかいう三年達が来て」
どの口が災難などと……! そう反論したいのはやまやまだったけれど、当然雲雀くん相手にそんなことは言えない。「はあ、まあ……」と曖昧な返事をして誤魔化した。
「おはよー、ゆうきぃー」
桜井くんも平然と、なんなら大あくびをしながら教室に入ってきて「あ、三国もおはよー」とやっぱり私にも声をかけた。自意識過剰でなければ、〝死ニ神〟に気に入られてしまったらしい。死神に気に入られたって死しか待っていないのだけれど。
「……おはよ」
「なー、三国、俺に勉強教えてくんない?」
……そしておもむろにとんでもないことを言い出した。
「……え、なに?」
「お前は勉強したってできないだろ。やめとけ」
私の疑問を無視し、雲雀くんが冷ややかに切って捨てた。桜井くんはムッと睨み付ける。
「雲雀の裏拳はマジ殺人級」
「庄内先輩、顎に一発食らった後、立てなかったらしい」
「桜井の蹴りで歯が二本折れたんだって」
「急に来た三年を二分でぶっとばすとか」
「人間じゃねえ……」
確かに、特等席で観戦していて分かったけれど、桜井くんと雲雀くんのヤバさは、一言でいえば躊躇のなさだった。きっと、大抵は相手を殴ったり蹴ったりすることに躊躇を覚える。それが得体のしれない巨体の先輩だとすればなおさらだ。それなのに、二人にはそれが一切なかった。ともすれば理不尽にさえ思えるほど、決断という思考過程など介在していないのではないかと思えるほど、二人の返事代わりの暴力は早かった。まさしく、命を貰うと決めた死神が鎌を振るのに躊躇しないのと同じ。
「おはよー、三国」
……そして、人の命をもらうのが死神の仕事にして日常だというのなら、桜井くんと雲雀くんにとって、先輩に絡まれそれを撃退するのは日常なのだ。教室で平然と話しかけてきた雲雀くんに、少し頬が引きつった。
「……おはよう」
「災難だったな、三国。昨日、庄内とかいう三年達が来て」
どの口が災難などと……! そう反論したいのはやまやまだったけれど、当然雲雀くん相手にそんなことは言えない。「はあ、まあ……」と曖昧な返事をして誤魔化した。
「おはよー、ゆうきぃー」
桜井くんも平然と、なんなら大あくびをしながら教室に入ってきて「あ、三国もおはよー」とやっぱり私にも声をかけた。自意識過剰でなければ、〝死ニ神〟に気に入られてしまったらしい。死神に気に入られたって死しか待っていないのだけれど。
「……おはよ」
「なー、三国、俺に勉強教えてくんない?」
……そしておもむろにとんでもないことを言い出した。
「……え、なに?」
「お前は勉強したってできないだろ。やめとけ」
私の疑問を無視し、雲雀くんが冷ややかに切って捨てた。桜井くんはムッと睨み付ける。