ぼくらは群青を探している
一体何事だろうと思っていると「何の話してたんだお前ら」「……ツクミン先輩が胡桃を勉強会に連れてこいって」桜井くんは口端を斜めに下げ、面倒くさそうな顔をしていた。でも、牧落さんが来て先輩達の勉強のやる気が出るというのなら呼べばいい気がする。一方で、牧落さんが群青に出入りしているとバレると桜井くんが牧落さんのご両親に怒られる……。ただ、牧落さんも群青には出入りしたがっている。
うーん、となぜか私が考え込んでしまった。天秤に乗せるものの性質が違うせいで判断がつきにくい。
「牧落サンを呼ぶだぁ? 却下、お前ら余計うるさくなるだけだろ」
しっし、と蛍さんは手を振るけど、先輩達が最強の|伝手に気付いてしまった今となってはもう遅い。九十三先輩を筆頭に「やだー、胡桃ちゃんがいるならちゃんとするー」「女子を増やせー」と抗議が始まった。
「三国ちゃんだってこんな男だらけより女の子がいたほうがいいよなあ?」
……そしてやはり私も巻き込まれる、と。こんなにも美少女が渇望されている中では、どうでもいいと答えてはいけない。そのくらい分かる。
「……そうですね」
「…………」
きっとそれは過半数どころか大半の先輩の意見を汲み入れた結果だったはずなのだけれど、蛍さんは渋い顔をした。きっと蛍さんは無駄に女子を招くことには反対なのだろう。
「……俺は反対ですけどね」
「なんでえ。女子はいるにこしたことはないだろ」
九十三先輩が今度は雲雀くんの肩を組むけれど、雲雀くんは鬱陶しそうに顔をしかめながら腕を退ける。
「女子が出入りするとなんか締まりがなくなるつーか、だれるっつーか。俺はそういうほうがイヤです」
「お前、新入りの一年のくせに永人さんみたいなこと言うなあ」
「つか群れるのが嫌い」
「雲雀くん、群青を漢字で書いてみようか?」
「青の群れ」
「はいよくできました、自己矛盾だね」
「能勢さんって時々ぶん殴りたくなる顔してますよね」
「慇懃無礼って言葉があるけど雲雀くんは無礼無礼だよね。ただただ無礼っていう」
「ねー、だから胡桃ちゃんはー?」
「蛍さんも反対してるし呼ぶ理由はないですよね」
雲雀くんは呆れた溜息を吐きながら数Ⅱの教科書を机に置き、数Ⅰの教科書を拾い上げようとする。
「雲雀くんってなんで牧落さん嫌いなの?」
その手は数Ⅰの教科書を拾い上げることはできず、パンッと机の上に落ちた。九十三先輩は私に視線を向けてぱちぱちと瞬きするし、九十三先輩の腕から解放された桜井くんは、机の上に腕と顎を載せたまま口を真一文字にした。ただ能勢さんはいつもの笑顔のままだ。
蛍さんは顔をぴくりとも動かさずに視線だけで私を見る。
「……お前、今まで全員が思ってて口に出さなかったことをよく言ったな」
「えっあっ」
……しまった、ぼんやりしていた。慌てて視線を動かして教室内を観察するけれど、先輩達は私の発言に全く関係のない話で騒いでいるので、聞こえていないらしい。先輩達の集中力のなさが幸いした。
ただ、この人達の前では誤魔化しようがない。冷や汗を流してしまっているのを自覚しながら「いや……」と口ごもった。
「……すみません、つい……」
「……嫌いつーか話通じないから話したくない」
うーん、となぜか私が考え込んでしまった。天秤に乗せるものの性質が違うせいで判断がつきにくい。
「牧落サンを呼ぶだぁ? 却下、お前ら余計うるさくなるだけだろ」
しっし、と蛍さんは手を振るけど、先輩達が最強の|伝手に気付いてしまった今となってはもう遅い。九十三先輩を筆頭に「やだー、胡桃ちゃんがいるならちゃんとするー」「女子を増やせー」と抗議が始まった。
「三国ちゃんだってこんな男だらけより女の子がいたほうがいいよなあ?」
……そしてやはり私も巻き込まれる、と。こんなにも美少女が渇望されている中では、どうでもいいと答えてはいけない。そのくらい分かる。
「……そうですね」
「…………」
きっとそれは過半数どころか大半の先輩の意見を汲み入れた結果だったはずなのだけれど、蛍さんは渋い顔をした。きっと蛍さんは無駄に女子を招くことには反対なのだろう。
「……俺は反対ですけどね」
「なんでえ。女子はいるにこしたことはないだろ」
九十三先輩が今度は雲雀くんの肩を組むけれど、雲雀くんは鬱陶しそうに顔をしかめながら腕を退ける。
「女子が出入りするとなんか締まりがなくなるつーか、だれるっつーか。俺はそういうほうがイヤです」
「お前、新入りの一年のくせに永人さんみたいなこと言うなあ」
「つか群れるのが嫌い」
「雲雀くん、群青を漢字で書いてみようか?」
「青の群れ」
「はいよくできました、自己矛盾だね」
「能勢さんって時々ぶん殴りたくなる顔してますよね」
「慇懃無礼って言葉があるけど雲雀くんは無礼無礼だよね。ただただ無礼っていう」
「ねー、だから胡桃ちゃんはー?」
「蛍さんも反対してるし呼ぶ理由はないですよね」
雲雀くんは呆れた溜息を吐きながら数Ⅱの教科書を机に置き、数Ⅰの教科書を拾い上げようとする。
「雲雀くんってなんで牧落さん嫌いなの?」
その手は数Ⅰの教科書を拾い上げることはできず、パンッと机の上に落ちた。九十三先輩は私に視線を向けてぱちぱちと瞬きするし、九十三先輩の腕から解放された桜井くんは、机の上に腕と顎を載せたまま口を真一文字にした。ただ能勢さんはいつもの笑顔のままだ。
蛍さんは顔をぴくりとも動かさずに視線だけで私を見る。
「……お前、今まで全員が思ってて口に出さなかったことをよく言ったな」
「えっあっ」
……しまった、ぼんやりしていた。慌てて視線を動かして教室内を観察するけれど、先輩達は私の発言に全く関係のない話で騒いでいるので、聞こえていないらしい。先輩達の集中力のなさが幸いした。
ただ、この人達の前では誤魔化しようがない。冷や汗を流してしまっているのを自覚しながら「いや……」と口ごもった。
「……すみません、つい……」
「……嫌いつーか話通じないから話したくない」