ぼくらは群青を探している
いや、私と陽菜が一緒にいるのはいつものことだし、そう驚くことではないのでは……? 桜井くんの丸い目に見上げられてたじろいでしまった。
「……まだ何も話してないけど、大体毎年陽菜と行ってるし……」
「仕方ないから池田も誘うかー」
「池田が来んのはいいけど、どっちかいうと問題は牧落じゃね?」
雲雀くんの指摘はあまりに的確だ。買い物にさえ付き合わせるのだ、お祭りに付き合わせないはずがない。
深々と頷く私の隣 (下?)で、桜井くんは「えー?」と首を傾げた。
「いいじゃん、アイツは言ってきたら断れば」
「それで牧落さんが引き下がるならいいと思うけど」
「いやソッコー拒否るところにつっこめよ」雲雀くんは呆れ声で「お前いい加減牧落のことどうにかしろよな」
「どうにかってもさあ……胡桃が勝手について来るんだから仕方ねーじゃん」
ヤカンからシュッシュッシュッと音がし始めた。沸騰する少し前……いま八〇度くらいだろうか。よく分からないから、急須に茶葉を入れ終えたタイミングで火を止めよう。
「そういう意味じゃなくて、付き合うか付き合わないかハッキリ決めたらどうだつってんだよ」
「えー?」
「えっ」
「え?」
茶葉を入れながら驚いて振り返れば、桜井くんの面倒そうな声が重なり、加えて雲雀くんの珍しく間抜けな声に迎えられた。そのせいで桜井くんの目まで私を見た。
「……えっ、ってなんだよ、三国」
「いや……その、付き合うか付き合わないかの二択しかないんだと思って……。でも確かに大別すればそれしかないか……」
「……何言ってんだ三国」
「タイベツってなに?」
「おおまかに分類すれば……みたいな」
「あー……まあそうだな。友達になれるかなれないかは『付き合わない』うちか」
うんうん、と納得する桜井くんとは裏腹に、雲雀くんはじろじろと不審なものでも見るような目で私を見る。また何か間違えてしまった……。
「……三国、もしかして牧落が|昴夜を好きだって気付いてないとか言わないよな?」
「えっ」
今度は私が素っ頓狂な声と一緒に雲雀くんを見つめ返す番だ。
「……好きなの……!?」
「お前マジか」
雲雀くんの声はドン引きしている……気がした。私の被害妄想でなければ。でも隣の桜井くんは「えー……」と首を傾げる。
「いやあれは好きじゃないよ。幼馴染だからだろ」
どうやら桜井くんは私の味方らしい。うんうん、と激しく頷いて桜井くんの肩を持った。でも雲雀くんは自分こそが正しいという姿勢を崩さない。
「幼馴染ってだけであんだけやたらめったら話しかけに来るか?」
「幼馴染っていう他にはない特別な関係性で充分説明できると思う……」
「三国、お前ちょっと黙ってな」
黙ってな……! 言い方が蛍さんそっくりだ。同時に頭に浮かんだイメージは、飼い犬がそのイタズラを悪いことと叱られてしまっているものの何が悪いのか理解できていない時の図だ。きっと今の私はそんな顔をしてしまっているに違いない。
「えー、でも俺も英凜と同じ意見。そんなに俺のこと好きなら普通科入れば?って感じだし」
「さすがにその自殺行為はできなかったんだろうな」
つまり普通科を選んだ当時の私は自殺を図っていたということだろうか……? でも確かに、桜井くんと雲雀くんと仲良くなったお陰で九死に一生を得ていた可能性がある。
「……まだ何も話してないけど、大体毎年陽菜と行ってるし……」
「仕方ないから池田も誘うかー」
「池田が来んのはいいけど、どっちかいうと問題は牧落じゃね?」
雲雀くんの指摘はあまりに的確だ。買い物にさえ付き合わせるのだ、お祭りに付き合わせないはずがない。
深々と頷く私の隣 (下?)で、桜井くんは「えー?」と首を傾げた。
「いいじゃん、アイツは言ってきたら断れば」
「それで牧落さんが引き下がるならいいと思うけど」
「いやソッコー拒否るところにつっこめよ」雲雀くんは呆れ声で「お前いい加減牧落のことどうにかしろよな」
「どうにかってもさあ……胡桃が勝手について来るんだから仕方ねーじゃん」
ヤカンからシュッシュッシュッと音がし始めた。沸騰する少し前……いま八〇度くらいだろうか。よく分からないから、急須に茶葉を入れ終えたタイミングで火を止めよう。
「そういう意味じゃなくて、付き合うか付き合わないかハッキリ決めたらどうだつってんだよ」
「えー?」
「えっ」
「え?」
茶葉を入れながら驚いて振り返れば、桜井くんの面倒そうな声が重なり、加えて雲雀くんの珍しく間抜けな声に迎えられた。そのせいで桜井くんの目まで私を見た。
「……えっ、ってなんだよ、三国」
「いや……その、付き合うか付き合わないかの二択しかないんだと思って……。でも確かに大別すればそれしかないか……」
「……何言ってんだ三国」
「タイベツってなに?」
「おおまかに分類すれば……みたいな」
「あー……まあそうだな。友達になれるかなれないかは『付き合わない』うちか」
うんうん、と納得する桜井くんとは裏腹に、雲雀くんはじろじろと不審なものでも見るような目で私を見る。また何か間違えてしまった……。
「……三国、もしかして牧落が|昴夜を好きだって気付いてないとか言わないよな?」
「えっ」
今度は私が素っ頓狂な声と一緒に雲雀くんを見つめ返す番だ。
「……好きなの……!?」
「お前マジか」
雲雀くんの声はドン引きしている……気がした。私の被害妄想でなければ。でも隣の桜井くんは「えー……」と首を傾げる。
「いやあれは好きじゃないよ。幼馴染だからだろ」
どうやら桜井くんは私の味方らしい。うんうん、と激しく頷いて桜井くんの肩を持った。でも雲雀くんは自分こそが正しいという姿勢を崩さない。
「幼馴染ってだけであんだけやたらめったら話しかけに来るか?」
「幼馴染っていう他にはない特別な関係性で充分説明できると思う……」
「三国、お前ちょっと黙ってな」
黙ってな……! 言い方が蛍さんそっくりだ。同時に頭に浮かんだイメージは、飼い犬がそのイタズラを悪いことと叱られてしまっているものの何が悪いのか理解できていない時の図だ。きっと今の私はそんな顔をしてしまっているに違いない。
「えー、でも俺も英凜と同じ意見。そんなに俺のこと好きなら普通科入れば?って感じだし」
「さすがにその自殺行為はできなかったんだろうな」
つまり普通科を選んだ当時の私は自殺を図っていたということだろうか……? でも確かに、桜井くんと雲雀くんと仲良くなったお陰で九死に一生を得ていた可能性がある。