ぼくらは群青を探している
雲雀くんの冷たい目には「三国以外全員知ってるのになんで三国だけ知らないんだ」「やっぱりクソバカか」と言われている気がした。被害妄想かもしれないけど。
「つか笹部のアピール分かりやすすぎたから、英凜が気付いてないはずないし、今年は浴衣着てきたし、笹部イケるんじゃね? って話になってて」
「……全員知ってるくらい分かりやすくアピってるから三国も気づいてるはずだし、それなのに三国に避けられるわけでもねーし、なんなら同じグループで夏祭り来るし、一年のときは浴衣着てなかったのに二年になって着たってことは三国もその気なんだなってその笹部が勘違いして告ったってことか?」
「そう! え、なんで分かったの、すご!」
雲雀くんの推理に感動する陽菜の隣で、私は頭を抱える羽目になった。やめてほしい。人生を間違えた話を他人からこんな風に語られると心底辛くなる。
「んでさー、しかもその日、花火の日だったから。場所取り組と買い出し組に分かれたりするじゃん。それで笹部と英凜が二人で買い出しに行って、そんで帰ってくるまでに笹部が告っちゃって」
「地獄絵図だな」
「いやもうマジ。笹部が『分かってると思うんだけど、三国のこと好きだから付き合ってくれない?』って言って、英凜の『ごめん全然知らなかった』『無理です』が炸裂」
「…………」
「いや、あの、えっと」
雲雀くんの目が一層冷ややかになった。お陰でうろうろと私も目を泳がせてしまう。
「その……、無理ですって言い方はもしかしたら悪かったかもしれないんだけど……」
「もしかしてもなにもねーだろ、極悪だろ」
極悪……! そこまで言われたのは初めてだ。
「で、でも、私も告白なんてされたことなかったから動揺してしまって」
「動揺して本音出たんだ。『無理』だって」
「桜井くんまでそんなこと言わないでよ!」
「てかあたしらは笹部の告白が成功すると思ってたから、帰ってきた二人の空気おかしくね……? カップル用にハートのクッション家から持ってきたんだけどマジなんで……? って慌てて」
「で、でも、笹部くんだっていくらでもそんなリスクを取らない選択はできたはずなのにリターンが悪かったことを嘆くのは見通しが甘いっていうか」
「いやお前、反省しろ?」
力強く、陽菜の左手が肩に置かれた。二年前もこうして怒られた。そのときは夏祭りのメンバー全員に怒られたけど。
「マジであの後の笹部、英凜にフラれて死ぬほど凹んでて死ぬほどうざかったから」
「だからそれはリスクを取った笹部くんが……」
「いや笹部はイケるって思ってたんだよ! お前が笹部の誘いに乗って映画とか行くから!」
「え、デートまでしたの」
完全に私が悪者に仕立て上げられる流れだ。目を丸くする桜井くんに向かってぶんぶん首を横に振ったけれど「そうそう、夏祭りの前日ね」陽菜がいると情報が止まる気配はない。止められないならせめて正確な情報にするべきだ。
「デートっていうと語弊が……最初は四人の予定だったのに二人ドタキャンするから……予定空けてた笹部くんにも悪いかなと思って……」
「でもいい感じだったろ? 映画」
「ううん、つまんなかったから感想口に出せなくて帰り道すごく気まずかった」
「いや笹部はよかったって言ってたよ」
「だから笹部くんはよかったって言ってあれこれ言うんだけど、私はつまんなかったから『そうだね』以外言えなくて……笹部くんの認識が甘いよ」
「つか笹部のアピール分かりやすすぎたから、英凜が気付いてないはずないし、今年は浴衣着てきたし、笹部イケるんじゃね? って話になってて」
「……全員知ってるくらい分かりやすくアピってるから三国も気づいてるはずだし、それなのに三国に避けられるわけでもねーし、なんなら同じグループで夏祭り来るし、一年のときは浴衣着てなかったのに二年になって着たってことは三国もその気なんだなってその笹部が勘違いして告ったってことか?」
「そう! え、なんで分かったの、すご!」
雲雀くんの推理に感動する陽菜の隣で、私は頭を抱える羽目になった。やめてほしい。人生を間違えた話を他人からこんな風に語られると心底辛くなる。
「んでさー、しかもその日、花火の日だったから。場所取り組と買い出し組に分かれたりするじゃん。それで笹部と英凜が二人で買い出しに行って、そんで帰ってくるまでに笹部が告っちゃって」
「地獄絵図だな」
「いやもうマジ。笹部が『分かってると思うんだけど、三国のこと好きだから付き合ってくれない?』って言って、英凜の『ごめん全然知らなかった』『無理です』が炸裂」
「…………」
「いや、あの、えっと」
雲雀くんの目が一層冷ややかになった。お陰でうろうろと私も目を泳がせてしまう。
「その……、無理ですって言い方はもしかしたら悪かったかもしれないんだけど……」
「もしかしてもなにもねーだろ、極悪だろ」
極悪……! そこまで言われたのは初めてだ。
「で、でも、私も告白なんてされたことなかったから動揺してしまって」
「動揺して本音出たんだ。『無理』だって」
「桜井くんまでそんなこと言わないでよ!」
「てかあたしらは笹部の告白が成功すると思ってたから、帰ってきた二人の空気おかしくね……? カップル用にハートのクッション家から持ってきたんだけどマジなんで……? って慌てて」
「で、でも、笹部くんだっていくらでもそんなリスクを取らない選択はできたはずなのにリターンが悪かったことを嘆くのは見通しが甘いっていうか」
「いやお前、反省しろ?」
力強く、陽菜の左手が肩に置かれた。二年前もこうして怒られた。そのときは夏祭りのメンバー全員に怒られたけど。
「マジであの後の笹部、英凜にフラれて死ぬほど凹んでて死ぬほどうざかったから」
「だからそれはリスクを取った笹部くんが……」
「いや笹部はイケるって思ってたんだよ! お前が笹部の誘いに乗って映画とか行くから!」
「え、デートまでしたの」
完全に私が悪者に仕立て上げられる流れだ。目を丸くする桜井くんに向かってぶんぶん首を横に振ったけれど「そうそう、夏祭りの前日ね」陽菜がいると情報が止まる気配はない。止められないならせめて正確な情報にするべきだ。
「デートっていうと語弊が……最初は四人の予定だったのに二人ドタキャンするから……予定空けてた笹部くんにも悪いかなと思って……」
「でもいい感じだったろ? 映画」
「ううん、つまんなかったから感想口に出せなくて帰り道すごく気まずかった」
「いや笹部はよかったって言ってたよ」
「だから笹部くんはよかったって言ってあれこれ言うんだけど、私はつまんなかったから『そうだね』以外言えなくて……笹部くんの認識が甘いよ」