ぼくらは群青を探している
「……本当に配慮が足りなかったと思うんだけど、妹とお祭り行かないのとか聞いちゃって……」
「別にいいんじゃん? 侑生も、別に英凜なら怒んないっしょ」
「そりゃ雲雀くんは優しいから怒ったりはしなかったけど……」
怒ったというか、傷ついてないかのほうが気になるんだけどな……。うーん、と割れていない割り箸と焼きそばパックを持ったまま首を傾けていると、桜井くんが私の手から割り箸を引き取って割ってくれた。別にそこに困って首を傾けていたわけではないのだけど、確かに片手では割れなかったので助かった。
「普段の情報からいくらでも読み取れたんじゃないかと反省して……」
「え、無理だろそんなの、侑生ってそういうの言うタイプじゃないし。英凜には懐いてんだから気にすることないって」ぱたぱたと桜井くんは手を横に振った後にハッとした顔つきになって「どっちかいうと侑生が英凜にあーんしてもらうくらい懐いてることのほうが気にしたほうがいい。アイツ、手負いの獣みたいなもんだから。あんまり気に入られると食われるよ」
「別にあーんはしてないけど……」
あと食われるってなんだ、獣なんてもののたとえなのに。でもぶどう飴を差し出したのは冗談半分だったというか、雲雀くんなら私の手頭からではなく串を受け取って食べると思っていたので、確かにあれは予想外だった。その意味では懐かれていると自信を持ってもいいのかもしれない。
「でも……そうだね、手負いの獣か……胡桃には懐かなかったんだもんね」
「まあ胡桃のとこは両親揃ってるし、なんか分かり合えねーって思うんじゃん? 俺もいうて母親いないし」
「でもそれでいったら私は揃ってるし……。なんなら、おばあちゃんの家にいるのは両親が心配した結果だし……」
でも、雲雀くんもお父さんの側に残りつつお母さんに会いに行くくらいだし、親子仲は悪くはないんだろうけどな……。そこはなんとも分からないところだ、と焼きそばに口をつけながら考えていると、視界の隅で桜井くんが片頬を膨らませて変な顔をした。
「……どうしたの」
「……いや、英凜のいう両親が心配した結果ってなんだろうって思って」
「ああ、私も結局言ってないんだっけ」そういえばこの間の勉強会では最後まで話さず終いだったと思い出しながら「私のアンバランスな性質を両親が心配して、育て方とか環境の問題かって色々考えた結果、田舎のおばあちゃんの家のほうがいいんじゃないかって思ったってだけの話」
「アンバランスな性質?」
「うん。知能の遅れが全くないのに、極端に他人への配慮とか共感性が欠けてるところ」
ただ、IQテストをした専門家にによれば「病名がつくほどのものでは全くない」。《《ただ》》、それは裏を返せば、病名はつかないが、その病名がつく性質に近いものがあることは否定できないということだ。
それこそ、このアンバランスな性質のお陰で今でもあのIQテストの結果を思い出せる。まるで折れ線グラフのようにズタズタでアンバランスな結果。あんな結果は、きっと普通は出ない。
桜井くんは「ふーん」と返事をしながら焼きそばを受け取る。
「別に、英凜がそうだとは思ったことないけどな。んなこと言ったら、多田とかのほうがよっぽどおかしくね? アイツ、昼休みに急に喚きだしたりするじゃん」
「別にいいんじゃん? 侑生も、別に英凜なら怒んないっしょ」
「そりゃ雲雀くんは優しいから怒ったりはしなかったけど……」
怒ったというか、傷ついてないかのほうが気になるんだけどな……。うーん、と割れていない割り箸と焼きそばパックを持ったまま首を傾けていると、桜井くんが私の手から割り箸を引き取って割ってくれた。別にそこに困って首を傾けていたわけではないのだけど、確かに片手では割れなかったので助かった。
「普段の情報からいくらでも読み取れたんじゃないかと反省して……」
「え、無理だろそんなの、侑生ってそういうの言うタイプじゃないし。英凜には懐いてんだから気にすることないって」ぱたぱたと桜井くんは手を横に振った後にハッとした顔つきになって「どっちかいうと侑生が英凜にあーんしてもらうくらい懐いてることのほうが気にしたほうがいい。アイツ、手負いの獣みたいなもんだから。あんまり気に入られると食われるよ」
「別にあーんはしてないけど……」
あと食われるってなんだ、獣なんてもののたとえなのに。でもぶどう飴を差し出したのは冗談半分だったというか、雲雀くんなら私の手頭からではなく串を受け取って食べると思っていたので、確かにあれは予想外だった。その意味では懐かれていると自信を持ってもいいのかもしれない。
「でも……そうだね、手負いの獣か……胡桃には懐かなかったんだもんね」
「まあ胡桃のとこは両親揃ってるし、なんか分かり合えねーって思うんじゃん? 俺もいうて母親いないし」
「でもそれでいったら私は揃ってるし……。なんなら、おばあちゃんの家にいるのは両親が心配した結果だし……」
でも、雲雀くんもお父さんの側に残りつつお母さんに会いに行くくらいだし、親子仲は悪くはないんだろうけどな……。そこはなんとも分からないところだ、と焼きそばに口をつけながら考えていると、視界の隅で桜井くんが片頬を膨らませて変な顔をした。
「……どうしたの」
「……いや、英凜のいう両親が心配した結果ってなんだろうって思って」
「ああ、私も結局言ってないんだっけ」そういえばこの間の勉強会では最後まで話さず終いだったと思い出しながら「私のアンバランスな性質を両親が心配して、育て方とか環境の問題かって色々考えた結果、田舎のおばあちゃんの家のほうがいいんじゃないかって思ったってだけの話」
「アンバランスな性質?」
「うん。知能の遅れが全くないのに、極端に他人への配慮とか共感性が欠けてるところ」
ただ、IQテストをした専門家にによれば「病名がつくほどのものでは全くない」。《《ただ》》、それは裏を返せば、病名はつかないが、その病名がつく性質に近いものがあることは否定できないということだ。
それこそ、このアンバランスな性質のお陰で今でもあのIQテストの結果を思い出せる。まるで折れ線グラフのようにズタズタでアンバランスな結果。あんな結果は、きっと普通は出ない。
桜井くんは「ふーん」と返事をしながら焼きそばを受け取る。
「別に、英凜がそうだとは思ったことないけどな。んなこと言ったら、多田とかのほうがよっぽどおかしくね? アイツ、昼休みに急に喚きだしたりするじゃん」